オーガストウォーズ
レンタルショップで観ると気になるのに、かといってどんな映画なのか調べてみようとか、借りてみようとはなかなか思わなかった映画の一つがこれ、『オーガストウォーズ』です。
パッケージのあらすじを見ると、戦地に取り残された小さな息子を母親が救出しにいく、というようなものなので、私はてっきり『コマンドー』のシュワちゃんとか、『96時間』のリーアム・ニーソンみたいなものかと思っていたんですが、全然違いました。
5枚で1,000円にするための一枚で、ちょっと気になってたこれにしようって、ほんとにあらすじしか見てなかったので、オープニングでいきなり変なロボットが出て来て驚愕。間違ったもの借りて来たのかとPCでパッケージのジャケット確認してしまいました。露製パシフィック・リムというのが売り文句だったんですね。(ちなみにパシフィック・リムは私には合わなかった。中の人の動きにドン引きしてしまって。全然かっこいいと思えず……)
ですがロボットは関係ないです。主人公クセーニアの小さな息子チョーマが、周囲を取り巻く人々、環境を自分をヒーローに見立てて妄想?しているだけで、精神世界の登場人物です。アメリカ映画なんかだと、7〜8歳くらいの男の子があれこれ痛快に活躍したりするわけですが、このチョーマ、かなりリアルに助けを待ってるだけの役でした。私も毒されているのか、この子の妄想癖(すでに想像力の域を超えてる)とか、焦る母からの電話に出ないとか正直いらっとさせられたし、途中で自閉症とか、それに似たなんらかの障害を持っている子なのかもしれないと思ったりしましたが、きっとクセーニアの今彼を含む、自分にとって望まない環境から心を護るすべでもあったんでしょう。最後まで観て、そんなふうに思いました。
以下、ネタバレ有りです。
クセーニアの元夫は平和維持軍の兵士で、今にも戦争が起こりそうな紛争地帯にいます。元夫は息子のチョーマをこちらに寄越してくれと何度か申し入れてるようですが、危険だと言うのでクセーニアは突っぱねていました。
その時は、両親に孫の顔を見せたいからと言われたのもあるし、たまたま今彼に「ソチへ一緒に行こう」と誘われており、多分魔が差したんですね。彼女は息子をものすごく愛しているけれど、元夫に預ければ、自分は今彼と一緒にソチへ行ける、と。(息子は今彼を蛇蝎のごとく嫌っている模様)
その後冷たい今彼に愛想を尽かして、クセーニアはその前線へ息子を捜しにかなり無謀な旅に出るのですが、きっと息子への愛だけではなく、自分を許せない思いもあっただろうと思います。
このクセーニア、なんだかスタイル全体のバランスはあまり良くないような気がするのですが(首が長く、肩幅が小さく、かなりほっそり)、顔は文句無く美人ですし、しかも今彼に会いに行ったまんまのカッコなので、前線に行くのに超ミニスカート。だからってわけじゃないと思いますが、行く先々で主にメンズが手を貸します、次々と。(笑)美人は得するの典型でもあるのですが、やはり多くのメンズにとって特別な存在である『母親』が、戦場へ息子を迎えに行くという気迫が胸を打ったんじゃないかな。最初に少し手を貸した兵士たちが彼女を見つけ、「彼女、生きてたんだ」とほっとしたのもつかの間。狙撃兵たっぷりの道を構わず駆けて行く彼女を見ての「まじかよ、ありえねえw」というロシア兵士の台詞にはちょっと笑いました。
元今彼、元夫、共にヒーロー顔ではないのですが、クセーニアを助ける男たちの一人がイケメンだなあと思っていたら……
クセーニアは戦場を行かねばならない自分がド素人で無力であることを自分で分かっているし、必死なのもあって、なりふり構わず「力を貸して、助けて」と乞うのですが、すごい素直で、プロの指示にはなんの反論もせず従います。イケメンロシア兵リョーハの俺様的指示にも黙って従い、彼の背中に隠れ、言われた通りベルトを掴んでちょこちょこ後を付いて行く姿がめちゃくちゃ可愛かった。ロシア兵たちの凄まじい戦いぶりを間近に見て呆然と「……お給料はいくらなの」と呟いてしまうシーンも可愛い。「車の運転はなんだか怖いわ……」とか言ってたくせに、息子のためになら命を賭けたカーチェイスもやり遂げる。すごい母親ですよー。途中でミニスカの下にジーンズ履いちゃったのはちと残念でしたが。(別に女性の足が好きなわけではなく、戦場をミニスカで駆け抜けて行く非現実性が結構気に入ってたのです)最後は……うーん、なにやらこの二人には『その後』がありそうな終わりで満足でした。最後の最後できちんと現実を見るようになったチョーマも、リョーハへの態度は元今彼とは全然違いますし。リョーハのお母さんも、嫁と孫が一辺に出来れば、少しは元気になってくれるのでは。
この映画、2008年に起こった南オセチア紛争が舞台となっています。ロシア軍が協力しているだけあって、戦闘シーンは非常にリアルですし、戦争ものというよりヒューマンドラマとしてすごく良く出来てた。残念な恋愛脳の持ち主である私も、ほんとそこはかとなく漂ったロマンス臭のおかげでさらに満足しましたし、持っておいてもいいかも。返す前にもう一度観たいくらい思ったので。