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- 2014/11/09 23:20
- Category:更新状況など
MLMのIFも少しずつ修正してるんですが、これ、連作の方へ移すべきかな。短編とかリクエストのところとかに散らかっててわかり辛かったりします?
料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。
2014年11月09日
MLMのIFも少しずつ修正してるんですが、これ、連作の方へ移すべきかな。短編とかリクエストのところとかに散らかっててわかり辛かったりします?
二年か三年前の映画なんですが、観たいなと思いつつ忘れていたのを「ハマー・オブ・ゴッド」か「キャプテン・フィリップス」の予告にその続編の映像が入ってるのを観て思い出し、今日返却ついでに借りて来ました。
意に反して強制的にマグナ・カルタに署名させられたジョン王(欠地王とか失地王とか言われてるあのヒト)は質の良くない傭兵を連れ歩いて、王権を回復しようと各地で大暴れして、ロンドンに迫る。それを押しとどめられる最後の砦、ロチェスター城に、迷えるテンプル騎士トーマス含む僅かな手勢をかき集めて反乱軍を結成したオルバニー卿が篭城し、フランスからの援軍が来るまで持ちこたえようと(もちろんジョンを倒してやると言う気炎はあげていた)戦うのですが……。
なんと20人対1,000人。
仲間に弓の達人がいるので、戦闘開始の最初のやりとりのとき、「ここでジョンを射っちゃえよ!!」と当然思うのですが、これは一応史実に沿った映画なので……(´・ω・`)
投石機、火矢、梯子で攻めて来る敵に対し、煮えたぎった油を上からぶっかけたりと、中世の篭城戦をかなりリアルに再現していたと思います。際立った軍師がいて奇策を立ててくれるわけでもなし、元十字軍騎士の主人公が戦国BASARAの武将並みの鬼神なわけでなし、白兵戦の表現はものすごく派手だけど(つまりちょっとリアルと言うか……苦手な人はグロいと思うかも)、とても地味です。雨が降り、雪の降る季節になって、ジョン王は主人公たちが弱るのを待ち、篭城兵士たちは餓えて乾き、ついには馬までが食料になってしまう。騎士である主人公の馬だけは殺してはならないという騎士の誓いのもとにトーマスが守り抜いたのですが。
オルバニー卿が集めた味方というのは、戦闘では頼りになるものの一癖も二癖もある、でもどこか憎めない連中なのですが、あるときは何気なく、またあるときは劇的に一人一人命を落として行き、援軍はなかなか来ず(別場面でそれらしい話をしている場面は出るんですが、こちらは状況を知っているだけにまだるっこしくて! 「(彼らが持ちこたえることを)神に祈ろう」とか言ってたってこちとら信念ある無神論者ですので「ああああ!!」って髪をかきむしりたくなりました)
主人公トーマスも確かに仲間内では抜きん出て強いのですが、どんだけ劣勢になっても戦っていられたLoRのアラゴルンなどとは違い結構気絶しちゃって、仲間が命を落としながら死にものぐるいで戦ってるのに参戦してなかったりと、なにげに「イラ……」とさせられるのですが、こういうとこもファンタジー映画ではなく史実を再現した歴史映画のリアルさなんでしょうね。城門が破られ、城主の奥方までが武器を取って戦う……というか逃れようとする姿が、ものすごく切羽詰まった感を醸し出していました。
トーマスはフランスから援軍が来るなどとははなから思っていないようだし、戦いに倦んでいる、その辺にも全く語られない彼がテンプル騎士団を離れた理由が凝縮されている感じで、ぺらぺら過去の話をされるより、十字軍が聖地奪還を旗印に現地で行った悪逆非道が胸に迫ります。
オルバニー卿が人質に取られ、「決して降伏するな!」叫びながら腕を切り落とされてゆくシーン(史実です)、トーマスは卿を慕う従者ガイに「見るな」と言うのですが、序盤は人を殺したこともなく、ぼっちゃんぼっちゃんした感じだったガイが「(あなたを助けるためでも)決して降伏しない!」と死に行くオルバニー卿に叫び、血走った眼を見開いて卿が手足を切り落とされ、投石機で壁に叩き付けられるところをじっと見ていたのが印象的でした。当時は、こういう形で「男」になっていく少年や青年も珍しくなかったはずですが、こういうシーンを見るのが私は一番辛い。オルバニー卿は安心して逝ったかもしれないと思うけど。
ぎりぎりで援軍が来て、ジョン王は撤退を余儀なくされるのですが、生き残りはなんと城主の奥方含め三人。ほとんど全滅に近いですが、ガイは援軍を見据えて「勝った……」と呟きます。確かに。犠牲は大きかったですが、篭城戦は撤退させた方が勝利者です。爽快感はないですけれども。「英雄だ」と言うガイに「死んだ者にこそ生きる価値があった」とか言う感じのことを呟くトーマスは、十字軍に続いてこの戦いでも生き残ってしまったことに罪悪感を抱きながらも、どこかそれが神に下された自分の運命だと受け入れたようにも思えました。
画面は薄暗く、登場人物たちは薄汚く、着ている物に蚤やシラミがたかってそうな、そしてまるで臭ってきそうな感じすらします。天気は終始悪く、イングランドだから、というだけではなく、あの時代の先行きの不透明な不安感を否が応でもなく煽っていました。ほんとに地味〜な映画なのですが、素晴らしかったです。流血描写に馴染みがない方以外には全力でおすすめできる!!
個人的にはあの最悪な王の惨めな死に様とかもちょっと見たかったんですが……。画面からは史実通りどこぞで苦しみ(赤痢で)、孤独に死んだ感がありましたが、オルバニー卿よりも悲惨な殺され方とかしてキーキー悲鳴を上げてるのみてすっきりしたかったです。イングランドではこの王の名があまりに悪名高いため、王の名に「ジョン」は付けないという噂がありますけど、ほんと納得のいくクソッタレっぷりでした。「こういう風な男になったのにはこのような理由が」的な描写もちょびっとはあったけど、ぜんっぜん同情出来ず「あっそ。ふうん」で流しちゃったほど!
一点だけ、リアルじゃないほうが良かったのにと思う点について。
これは完全に私の好みなんですけれども……。中年の童貞(トーマス)食いの城主の奥方が、ほんと「満たされない奥方」って感じの女優さんで(失礼)なんか変にリアルというか、生々しいというか。女兄弟どころか母親とのキスさえ許されない貞潔の誓いに縛られた騎士を迷わせ、誓いを捨てさせるのだからなんというか、もっとこう……神々しい感じの人っぽい生々しさがあんまり感じられない美女のほうが良かったなあ。まあ、そんな美女と最後二人で暮らしてくって考えたら、現実味がないんだけど。トーマスは貧乏に当然慣れてるだろうけど、映画の奥方はそんな生活にも逞しく順応しそうな感じの女性ではありました。
……って、テンプル騎士団テンプル騎士団って書いてて、アーンを観るの忘れてたことも思い出しました。ブラッドウォーと一緒に今度借りて来よう。
料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。