金繕い其の二
前回はにゅう(ヒビ)の修理でしたが、今回は割れたマグカップで。
なかなかひどい目に遭いました。漆と言うのは、完全に乾くと無害になります。欠片を完全にくっつけるために、用心して一月の間をおき、次の作業に入りました。麦漆(水で練った小麦粉と本漆を混ぜたもの)で欠片をくっつけ、乾くとつなぎ目がうっすらへこんでしまう部分がどうしてもあるので、水で練った木の粉と本漆を混ぜたものをそこに充填し、完全に乾いたら耐水ペーパーでフラットな上体になるよう研いでいくのですが、私このときもう乾いているのだからと手袋をしませんでした。
で、両手の指全体に海ぶどうのように中に膿みが詰まった水泡がわわわわ〜っと出来てですね。うわ、漆かぶれに似てる、と思ったのですが、そのころ別の薬品にも触れたことと、乾いた漆に害はないと信じていたので、研ぎのせいだと思わなかったんです。そのうえ、私のなる漆かぶれには呼吸がありまして、すごく痒くなる時とそうでないときというのがあったのですが、これはもうひたすら痒かったので、それでも違うと思っていました。
痒くて夜も寝られず、保冷剤を握って寝て、それが溶けると目が覚めるの繰り返しが2週間くらい続きましたか、もうおかしくなりそうだと思っていたのですが、漆のせいだと思ってないので、その次の工程の錆び付け(砥の粉と水を練ったものと本漆を混ぜたもの)の研ぎのときも手袋しませんでした。
漆かぶれは、今現在出ているところにはなぜか上書きされず、なっていないところに出ます。(つまり広がるわけ)で、さすがにおかしいと思い調べてみたら、この漆の研ぎ汁、相当なくせ者らしいです。
水に溶けるんなら、コーヒーなんか入れられねえじゃねえかと主人は言うのですが、完成して一月近く毎日使ってみた現在、喉とか内臓はやられていませんので、紙ヤスリで細かい粉が水に溶けたのが良くないのかなあ、と。(陶器を傷めないために、水をつけながら研ぐのです)
母から頼まれたぐい飲みの欠けの繕いを今やってるのですが、研ぎも医療用使い捨て手袋つけてやってるので、今の所かぶれてはいません。フラットになったかの感触は素手のほうがわかりやすいので、早く耐性のついた身体になりたいなと切実に思います。
でも、出来はまあまあだと思いませんか?
これネットショップで発見して一目惚れした笠間焼なのですが、大きさがほんとちょうど良く、色合いからしてもコーヒー、緑茶どちらもいけるし、すごく気に入ってました。多分自分で直せなかったら、割ったときまた号泣したと思うのです。でも、金の線が入って、ますます気に入りました。