モツの思い出をしみじみ語ってみる
今月また一つ歳を取ります。
先日乳液が切れたんですが、買いに行くのが面倒だなあってちょっとだけ(っていっても一週間も……)なしで生活していたら、なんか化粧のりが悪いというか、なんか浮いた感じになりました。
うあーと思っていたら、誕生日に何食べに行こうかと言われ、もう迷わず「もつ鍋」と答えた私です。大好きなお店のはコラ〜ゲ〜ン!て感じでお肌がプルプルになるのだ。もうカッコつけてフレンチとか言ってる場合ではありません。
もつって言えば、母は死ぬほどこれがダメで(というかお肉全般があまり好きではなく、レパートリーも少なかった)実家で出たことはありません。母がそんなだから、私も「内臓」と聞いてウヘェって思ってたし(なぜかレバーは甘辛く煮付けたのが出ましたが、母は断固口をつけなかった)弟だけたまに父とそういうものを食べに行っていましたが、ちっとも羨ましいと思いませんでした。
それが十九歳くらいの冬、当時上北沢に住んでた友だちの部屋に遊びに行ったらドアに張り紙(というか半分ポストに突っ込んであり、半分がはみ出していた。もちろんポケベル時代のことです。持ってなかったけど)がしてあって『バイト先に鍵を忘れた! 取りに行って来るからどっかで時間潰してて!」とある。
どっかって言ったって、上北なんて駅のそばだって21:00過ぎて時間潰せるとこなんか(当時は)あるわけない。でも寒い……>< ふらふら彷徨ってたら、住宅地の中にチェーン店ではない居酒屋を見つけました。
ええ、十九です。友だちとも食事には行くけど飲みに行ったことなんてなくて、居酒屋なんてチェーン店ですら足を踏み入れたことがありませんでした。でもそこしかなくって、牛丼やに一人で入れって言われたってこれほど怖くはないだろうと思いながらびくびくと店に入りました。それほど混んではなくて目立たないすみっこに座って。注文取りに来られても、何を頼んでいいかわかりませんでした。(ビールは躊躇なく頼みました。スミマセン好きなのです。時効だよね)
仕方なくおばさんに「おすすめってなんですか」と聞いたところ、「今日は煮込みがおすすめ! おいしいよ〜」と言われ、「じゃあそれで」とあと二、三品みつくろってもらいました。
多分、ここでおばさんが「今日はもつ煮がおすすめ!」と言ったら絶対頼みませんでした。が、煮込みと言われて私が想像したのは筑前煮のようなものだったんですね。
想像とは違ったけど自慢していた通り、「煮込み」はこってり味噌味、ショウガが効いてて身体もあたたまり、すっごいおいしかったです。中に入っている肉片についてもこれ、なんのお肉だろう? お肉だよね? 違うかな? みたいな感じで普通においしくいただけまして、まさかうわっと思ってた内臓だなんて思っても見なかったです。
その後友人に聞いてみて正体がわかりましたが、すでに私の中で「モツ煮込みはおいしい」と刷り込まれており、大好物になったわけですけど、あの一件がなければ、こんなにおいしいものを食わず嫌いなままだったんだ、大損だったんだと今でも思います。自分でモツ煮作るほどになるなんて十八までの自分に言っても信じないだろーなー。
どこにいってもその最初の居酒屋で食べて衝撃を受けた味とは違う気がして。自分の作るのが一番近い味だと自負しています。上北なんて近いんだから行けばいいじゃん、と言われますが(まだあるのかな……? 場所とかもう憶えてないし、店の名はそもそも最初から憶えてない)、最高の思い出のままおいておきたい気もして、その後は一度も行っていません。