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闘犬アッシュ22

某さまのブログで知りましたが、夜中にダニー・ザ・ドッグやったんですね! これまで観たこと無かったけど、これをきっかけに観てみたよという方が他にもおいででしょうか。

すみませぇぇぇぇぇぇん!!!!!!!

全然違うじゃんときっと思われたと思います>< で、でも面影はあるんですよ! 「ピアノ」「調律」「首輪」「盲目」「犬」わあ〜っ結構ある!heart04

ジェット・リーはハリウッド系だと「キス・オブ・ザ・ドラゴン」も大好きなんですが(こっちはかわいいというよりクールでかっこいいです)やっぱりワンス・アポン・タイム・イン・チャイナシリーズが一番好きかなあ。(途中で降板するんですが、後を継いだウィン・ツァオもかっこいいです(眉毛が)『ブレード 刀』は惚れました! 隻腕の武人、という設定にドキドキするようになったのは彼のせいかも)

『D&D 完全黙秘』もかなり好きです。ファン歴結構古くて、『阿羅漢』の映画公開からですから、最初はお父さん役やるようになったんだ……とかなりショックだったんですけど。小さい息子と共闘するのが痛快なのです。(息子ヨーヨーには爆笑するけど)

「あれ? 今のファブレか? 珍しいな、こんな時間に」
 グランコクマ音楽学院ピアノ科の最高学年に所属する男子生徒は、人ごみを隔ててすれ違って行った年下の少年の姿を、酒精に濁った目で見つめた。
「誰だって?」
「うちの学校の後輩。目が見えないんだが、落ちこぼれの俺と違ってあちらは将来を嘱望されるエリートサマ! でね」
「ふん。おぼっちゃまか」
『友人』が馬鹿にしたように、鼻を鳴らした。

 故郷の街では天才と呼ばれ、両親の期待も背負って音楽の名門校に入ったが、グランコクマ音楽学院には同程度の才能など山ほどいた。一握りの『天才』がコンクールの上位を独占し、年など関係なくどんどん後輩に追い抜かれていく。そこで腐らずに己の音を追求し続け、花開いた大器晩成型ももちろんいるが、彼は諦めてしまった大勢のうちの一人だった。彼を天才と信じて疑わない故郷の家族や友人たちにはことさらに明るく前向きな手紙を書き送り、その実夜の遊びで知り合った質の良くない『友人』たちと夜な夜な遊び歩いていたりする。授業もさぼり気味だ。
 そんな彼が一後輩にすぎない少年を見知っているのには、むろんいくつかの理由がある。ピアノ科で最も尊敬されるトリトハイムがルーク・フォン・ファブレに目をかけているというのが一つ。少年がグランコクマ音楽学院二大マドンナの幼なじみで、よくつるんでいるというのが一つだ。
「キムラスカのお貴族サマの末裔だってさ。死んだ母親はピアニスト、父親は指揮者の音楽エリートさ」つまらなそうに鼻を鳴らしたあと、先日聞きかじった噂を思い出した。「ガキみたいな顔してんのに、男いるってよ、首がキスマークだらけだって噂になったんだよな。首だけでそれじゃ身体の方はどんだけだって話。天才サマはヤリまくってても成績いいんだからいいよなー」
 実のところ、最も多かった噂は、かなり年上の、もしかしたら人妻──いかにも人妻に可愛がられそうなタイプだ──の恋人が出来たのではないかというもので、皮膚病かアレルギーではないかという噂が二番目に多かった。チェロ科の後輩に軟膏を塗られている姿を目撃されたのもあり、このところはなんらかのアレルギー疾患だろうという噂で落ち着いてしまっていたが、彼はそれを故意に無視し、三番目の、一番面白く、悪意ある噂を選択した。
 彼の言には後輩に対する悪意があったが、実のところ積極的に傷つけたいと思うほどの恨みもなかった。彼はただ、彼を追い抜いてどんどん上へ上がって行く目障りな後輩を『友人』と一緒に罵倒し、笑いものにできればそれで良かったのだ。
「へえ……。ちょっと顔見てやろうか。可愛いけりゃ遊んでやってもいいな」
 だから酒とクスリで白目の濁った『友人』たちが、後輩のほっそりとした後ろ姿を振り返り、顔を嫌な笑いに歪めて舐め回すように見つめたときに、初めてまずいことになったかもしれないという嫌な予感がして、背中に汗が流れた。

 ヴァン・グランツを情に厚いと評するものが百人に一人くらいはいたとしても、善意の人と思うものはいないだろう。
 だから彼が路地裏に連れ込まれていく、この界隈では珍しい清潔な身なりの少年を思わず助けてしまったのは、善意からではない。彼の義弟によく似た鮮やかな朱の髪が、ただ目を引いたからにすぎない。ただの気まぐれだった。
 葉巻を吹かしながらぶらぶらと路地に入っていくと、抵抗も空しくゴミ袋の山をクッションにして少年がうつぶせに押し倒され、今しもジーンズをはぎ取られようとしていたところだった。
「そこで何をしている」
 二メートル近い身長に品のいい三つ揃いを隙無く着こなした偉丈夫の名を知らないものは、ニュースを見ないものだけだ。この界隈がグランツファミリーのテリトリーであることを知らないものがいたとしても、この姿を見間違えるものなどいない。一見、ごく普通のビジネスマンのようなナリだが、肉食獣のように無感動に光る薄い蒼の瞳と、スーツの上からも鍛え抜かれているのがわかる体躯とが、彼の職業を決して見誤らせない。
「え、ほ、本物……?」
 少年たちも例外ではなく、酒やクスリに充血した目を見開いて後ずさりする。
「そのチンケなものをしまえ」
 嫌がる少年を犯してやろうという興奮にみっともなく膨らませていた股間は、いまや萎縮して縮み上がっていた。ヴァンがあからさまな侮蔑の視線をそれに投げかけると、少年たちがあたふたと降ろしていたズボンを引き上げる。顎をしゃくると、ジッパーを上げる余裕もなく横をすり抜けて走り去って行った。
 三人の大柄な少年たちによってほとんどまともな抵抗すらさせてもらえないまま引きずり回されていたらしい少年は、なぜ急に解放されたのかもわからないまま、脱がされかけたシーンズを慌ててあげ、ジッパーの壊されたジップアップのトレーナーを掻き合わせた。
「大丈夫か」
 声をかけると大げさなほど少年はびくりと身を震わせた。ゴミ袋に手をついて起き上がろうともがいているが、身体が沈んでうまく立ち上がれないようすだ。
 その手探りのようすに、ヴァンはようやく様子がおかしいことに気付いた。
「……目が見えんのか」
「あ、はい……。杖を取られてしまって」
「手を貸そう」
「す、すみません」
 ゴミの山で泳ぐ少年の手を取って引きずり起こしてから、ヴァンは初めて少年の顔を見、息を飲んだ。
「アッシュ」
「えっ?」
 そんなはずはないのに、思わず口からこぼれた名に、少年が驚いたように顔を上げた。殴られたのか、左頬がほんの少し腫れて見える。目の周囲が濡れているところを見ると、少し泣いていたようだ。目は閉じたままだが、その顔立ちは他人であるという言い逃れができないほど、彼の義弟に似ている。
「アッシュを知ってるんですか?」
「──お前の言うアッシュが、アッシュ・グランツのことなら、私の弟だが」
「……もしかして、ヴァン?」
 アッシュの名の効果は劇的だった。ハリネズミのように目に見えていた、とげとげの警戒心がぱっと霧散する。最初に思ったよりもあどけない、朗らかな笑みが、あまりに親しげな呼びかけに戸惑うヴァンに向けられた。ヴァンはもう久しく、このように清潔で素直な笑みを向けられ、ファーストネームを呼ばれたことがなかった。
「そうなんですか! あの、ありがとうございます、危ないところ、助けていただいて」
 ピアノを弾く盲目の少年とは聞いていたが、髪の色、顔が非常に似ていることなど、ヴァンは聞いていない。我知らず眉間に皺が寄り、顔が厳しく強ばって来る。
「……ルーク・フォン・ファブレ、か?」
「そうです! あなたのことは、アッシュから良く聞いています」
 このところアッシュが夢中になっているという少年は、やはりこの子どもで間違いないようだ。思っていたよりもなお幼い感じであり、アッシュのような特殊な育ちの男の心を動かすほどのなにがあるのかヴァンにはわからなかった。ヴァンの目には、少年は正しく少年であり、およそどのような劣情も喚起させない健全で健康な少年に見える。
「……偶然とはいえ、助けられて良かった。お前になにかあれば、あの狂犬がなにをしでかすかわからんからな」甘い香りと一緒に、ため息も吐き出した。
「──狂犬?」
 少年が、ふと眉をひそめた。
「首輪を外してくれたのはお前だったな。あれは、お前の前ではさぞ従順な飼い犬のフリをしているだろう。だが本性はまるで違うぞ。あれの本性を一目見れば、お前もこれまでのようにあれを愛玩することなどできまいよ」
 少年が見えぬ目を見開いて、まっすぐにヴァンを見上げた。新緑のような柔らかく澄み切った緑の瞳が、怒りで炯々と煌めき、朱の髪が焰のように揺らめく。
「彼は犬じゃない。訂正してください」
 アッシュのものと同じ瞳の色に、ヴァンはその目を固く閉じた。「その痣だらけの首は、あいつが付けたものか」
「訂正してください! 彼を犬呼ばわりするな! アッシュは……っ、アッシュはあんたのことすげえ慕ってるようなのに、それなのに……くそっ!」
 地団駄を踏んで喚く少年を、ヴァンは珍しいものを見るような目で見つめた。少年の頭からは、自分がたった今強姦されかけたことなど、もうすっぽ抜けているようだ。
「……あれの首輪を外せたことに敬意を表して、訂正しよう。だが残念だが、それはお前の勘違いだ。あれには他者に対する興味などない。お前が例外なのだ」
「そんなことない! あんたとか、婆ちゃんとか、マリィベル、リグレット。美容師のディストとかあんたの側近のバダック。アッシュはいろんな人の話をしてくれる。アッシュの話はいつも優しい! 人の悪口とか言わねえしっ……。おれ、だからおれ、あんたのこときっと良い兄貴なんだろうって思ってたのに……」

 そうだな。良い兄貴になろうと思ってたさ、とヴァンは煙と一緒に苦い過去も吐き出した。
 一人っ子だったから、弟が出来てヴァンは嬉しかった。
 最初のころは。

 だが、『どの弟』も良い弟になどなってくれなかったし、結局一度もヴァンを兄と認識してくれなかったのだ。

 

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料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。

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