Entry

闘犬アッシュ21

楊家女将伝(サブタイトルの『女ドラゴンと怒りの未亡人軍団』に( ゚д゚)ポカーン)がいまいちすぎてがっかりです。男どもが軒並み情けなくて頭悪くてイライラしました。女性陣はかっこいい。排風さんが特に! 使用人女性たちは全員坊主頭にして、勝つまで伸ばさない覚悟で出陣するんですが、排風さん坊主頭が死ぬほど似合います!! 強いしheart04

ストーリーは詰め込み過ぎで感情移入しづらく、戦闘シーンはあんまりリアルではなく、早回しとワイヤー多用でコミカルなイメージ。京劇を意識したのかもしれません。女性陣の活躍は京劇に多いですし。でも好きじゃない……この殺陣。ワイヤーとか早回しとかがあからさまにわかると萎えてしまう。『マッハ!!!!!!!』のせいで目が肥えたのかなー。

穆桂英ですが。楊家将演義では脇役のようですが、京劇には彼女主役の演目も多く、人気のあるキャラクターなのに、なんか地味で、過去の回想以外にあまり戦闘シーンがなく、ちょっとがっかりでしたー。つか、「女ドラゴン」って誰? 龍頭杖のひいおばあさまのこと??

以下、闘犬。

「前、話してくれた人? 名前なんだっけ……? 髪の色が似てるっていう」
「アッシュ? ……アッシュは男だぜ?」ルークは往生際悪くそう言ってみたけれど、一枚上手なアニスにはさらりと聞き流された。
「出来れば相手は男の人であって欲しいって願望。だってそれ付けたのが一人の人間なら、かなり執拗なタイプというか、狂気じみてるよ。女だって思うと怖いもん」
「男でも女でも怖えよ、そういうタイプ。どういう偏見だよ」
 ルークは思わず吹いてしまった。首が今どういう状態になっているのかルークにはわからないけれど、狂気じみているという言葉ほどアッシュに似合わないものはなかった。行為の最中のことだからほとんど自失していて、あまりよく憶えてはいないけれど、彼にとっては「自分の宝物」を取られたり失くしたりしないよう、たくさん名前を書いておく感覚だったのではないだろうか。
「どんな感じなんだろ。蕁麻疹とかで通せそう? 食べ物にあたったとか……」
「うん、あたしにはそんな感じに見えなくもないし、いけると思うんだけどぉ……。もしかしたら、わかる人にはわかっちゃうのかもしれないけど……。アッシュなの? そういうことになっちゃったの?」
「うーん……」
「好きなの?」
「ああ……うん」
 友人とはあまり性的な話をしたくはなかったが、いざこうなるとアニスはガイより話しやすい友人だった。アニスが女の子だからかもしれない。同性の恋人のことを同性の友人に話すのは、それなりに勇気が要りそうだ。
 恋人と呼べる存在が出来たことは誰にも黙っていようと思っていたが、問われたら嘘をつく気もなかったため、ルークは正直に頷いた。
「どうする? もしティアたちの耳に入ってもそれで通す?」
「う、うーん。任せるよ。しばらくは首、隠れる服にするし」
「わかった。じゃ、皆が自分で気付くまで、あたしからは言わないことにする。これは当分の間、あたしとルーク、二人の秘密だよ?」アニスは神妙に約束したあと、言いづらそうに付け足した。「卵かなにかにあたったみたいだって噂、それとなく広めておくよ。でもさっきも言ったとおり、わかる人にはわかるかもしれない。確実なこと言えなくてごめん」
「いいんだ。おれが不注意だった」
「ルークは自分で鏡見てチェックできないんだから、アッシュが不注意すぎる。ちゃんと叱っておきなよ。確信犯なら質悪いし! なんか心配だなぁ〜! 粘着っていうか、ストーカーになったりするタイプじゃない? 大丈夫?」
「あっは、違う違う! 大丈夫」
 ルークは吹き出しながら否定した。アッシュに注意する気など、まったく起こらなかった。首筋の見えない長袖の服を着れば良いだけの話だ。キスマークを知らなかったアッシュに、ルークがアッシュのものだと印を付けることだと教えたのはルーク自身。アッシュが喜んでぺたぺた印を残したところで、叱る道理などなかったのだ。

 実際にそれが見えないルークには、恋人が──セックスの相手が出来たということが他人の目に一目瞭然になるということは、顔から火を噴きそうなほど恥ずかしいことだったけれど、いっそあどけないとも言えるほど幼げな顔の下に、淫靡な赤い痣を纏っているというそのことが、ある種の性癖の、それもあまり質の良くないものたちの興味を引くこともあるなどと夢にも思わなかった。日頃ルークに向かってつけつけとませた発言を繰り返すアニスにしても、簡単な忠告はすることができても、それが真に用心すべき事柄であるとは思わなかったのである。

 コンクールの自由曲を弾いていたルークの耳が、音の狭間に鍵の回る小さな音を拾った。
 二月の間使われなかった鍵だったが、昨晩はうんと遅い時間だったから、ルークを起こさないように使ったのだろう。今日はさしずめ、練習を邪魔しないようにという配慮からだろうか。
 ルークは弾いている曲を「チーズケーキの歌・改」に変えた。適当に弾いているので、前回と全く同じではないのだ。だがアッシュには、それでルークがアッシュの来訪に気付いたことがわかったのだろう。廊下を軋ませる靴音が、少し弾んだのがわかった。
「ちゃんと生きてるぜ!」
「わかってたけど、逢いたくて。今日もあんまり長くはいられないけど……」
 テーブルの上に紙袋が置かれ、ソファにアッシュが座る音がした。練習の邪魔はしないというスタンスらしい。だが一日一緒にいられるならばともかく、二、三時間しかいられないアッシュよりピアノを優先させる気などさらさらないルークは、ピアノを放り出してソファのアッシュに飛びついた。きっとアッシュが受け止めてくれるだろうと大して考えもせず適当なところで身を投げ出したが、アッシュの方も腰を浮かせて受け止める体勢になっていたようで、思ったよりもはやく大きな身体に抱きとめられる。
「危ない、ルーク」
「全然危なくねーじゃん」胸に頬をすり寄せると、アッシュのにおいがして、胸がぎゅうっと締め付けられる。頭のてっぺんに、アッシュの頬が寄せられるのを感じ、ますます甘苦しい、幸せな気持ちになった。
「夜、ちゃんと食べた?」
「適当に」
「やっぱり。適当じゃ駄目だ。ちゃんと食べないと。ルークは体力がなさすぎる。すぐに食べられるものを買ってきたから……」
 アッシュがルークの身体の輪郭を撫でる手には余計な感情がなく、ただ情報として確かめるだけのようだったので、ルークはむっと唇を尖らせた。「おれは普通だっての! お前が普通じゃないんだって! 一緒にすんな!」
「でも……。ルークは大抵の女より体力がない。抱いているのがルークだと思うと俺はすぐ胸が一杯になって、いつもの半分もできないのに。──俺は、ルークに学校、休ませたりしたくない」
 あれで半分以下!? ルークはぐっと詰まって口からこぼれそうになった罵り言葉を飲み込んだ。ルークはアッシュしか知らないから、どの程度が標準なのかわからない。だが二倍だなんて到底出来っこない……。今でさえ二晩とも途中で眠ってしまって──気絶したのかもしれないが──アッシュがちゃんと満足できたのかどうかもわからないというのに。
 ルーク自身は、人並みの体力はあると思っていたけれど、もしもアッシュが言うのが正しいのなら、確かにルークは体力がなさすぎるだろう。
「な……慣れてないからだよ、多分。もう少ししたら、きっとそんなことなくなる……」もうルーク以外の人とはしないというアッシュの言葉を疑うわけではないが、女の人はもっとずっとアッシュを満足させることができるのかも知れないと思うと、ぎゅっと絞られたように胸が痛んだ。「それに、今日はガッコ、ちゃんと行けたもん。慣れたら大丈夫ってことじゃん」
 アッシュは褒めているのか宥めているのかよくわからない手つきでルークを撫でた。
「……俺が達くときは、ルークに名前を呼んで欲しい……」
「な、名前な。わかった。任せとけ」
 恋人のこんなかわいい、甘いおねだりを聞いてやれないような男に、男子を自称する資格はあるまい。ルークも即座に頷いた。「わかった。もっと食べるし、余裕があるときは走り込みもして体力付けるように頑張る」
「うん。早く大きくなれ」
 アッシュが満足そうな笑い声をあげ、ルークもやっと安堵の息を吐いた。
「なあ……。三日も続けて逢いにきてくれて……。おれは嬉しいけど、アッシュはヴァンに叱られたりしねえ?」
「少しだし構わない。……ルークは迷惑じゃないか? 俺はルークの練習を邪魔していると思う」
「そんなことない。今日、トリトハイム先生に褒められたんだぜ、音が変わったって。──こ、恋人の影響かも? みたいな、こと?」
 先生にはバレたんだと思うと、次に顔を合わせるのが憂鬱だったが、滅多に褒めないトリトハイムに音が良い方に変わったと褒められたのは嬉しかった。アッシュは邪魔どころか良い影響になってくれている。
「それならいいけど……。本当は、毎日でも逢いたいんだ。ルークをずっと持ち歩きたい。毎日ピアノを弾いてもらって、毎晩抱いて眠れたらいいのに……」
 本当に、そうできたらいいのに。そうすれば一緒にいるのが当たり前のように思えて、逢うたびにぎゅうぎゅう締め付けられて苦しくなる胸も、少しは楽になるのだろうか。
 アッシュの身体に回した手に、ぎゅっと力を込める。キスをねだって顔を上げると、すぐに唇が下りてきて、優しくついばまれた。アッシュのキスは、まるで身体の内側からくすぐられているような感触がする。心臓のあたりから身体の隅々まで、じわり、じわりと甘く重苦しい官能が広がっていく。
「ルーク、先に、なにか──」
 唇を離し、咎めるようにかけられた声は、だが言葉とは裏腹に、欲望でひどく掠れている。頬にかかる息は、燃えるように熱い。
「もう少し腹空かしてたほうが、たくさん食べられるような気がする……」
 ルークの声も震え、掠れていた。アッシュが欲しくて、もうどうにかなりそうだった。
 アッシュは、言葉の意味を正しく受け止めてくれ、低く笑ってルークを引き寄せた。獲物を食いちぎる獣の唸り声に似ていると、ルークは思った。

Pagination

Utility

Calendar

10 2024.11 12
S M T W T F S
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

About

料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。

Entry Search

Page