パラレルAL 24話
ネットで確認したら、フ/ラ/ン/キーリングあったみたい。石は水色でした。ロ/ビ/ンから後の仲間たちのリングがショーケースになかったからないのかと思ったのに。聞いてみれば良かったな……。そしたら私はチ/ョ/ッ/パ/ーにしました。この二人だと、私の腐女子仕様の残念な頭でも『コンビ』になるのです。
『ほたるの群れ2』読みました。バトロワのメイン三人の印象はそれほど外れてもいないようです。すごく面白い! 今年二位かな、と思います。(一番はぶっちぎりで『銀二貫』です!! つか、ここ五年以内で一位って言ってもいい)コミック一位は『進撃の巨人』でしょうか? 明後日6巻出ますね。
以下、パラレルです。
急ぎすぎたかなとちょっと苦戦。一話一話は短いのに話数かさんでいます。あれー。
「……? アッシュ、王都の方向、違わねえ? だいぶ北東にずれてるような気がするんだけど」
川下へ一時間ほど下り、落ちたのとは反対側の崖を這い登って歩き出すや否や、ルークが足を止めて不審そうに進行方向と北西の方向を見比べる。方向感覚はかなり鋭いらしく、最初に目指していた方向と違うことにすぐ気付いたようだ。
「ああ。昨日荷物を取りに行ったときに気付いたんだが、こっちに行くとさっきの川とほぼ平行に走ってる川があるんだ。それを使って川を遡れば、ちまちま獣道を旅するより早いんじゃねえかと思ってな」
「そうなんだ。でも、船は?」
「対岸に行きたいやつが使うのがある」
「借りていいの」
「ま、構わねえだろ。めったに使うやつもいねえし……。あとで戻しとけばいいさ」
「そっか」
ルークが疑う様子もなく頷くのを、アッシュはほんの少し目元を和ませて見つめ、すぐに逸らした。朝起きたときには気まずい思いをするかとも思ったが、ルークはアッシュが思わず落胆してしまうほどに普段と変わりがない。ほんの少しでもアッシュを意識するそぶりがルークにあれば。……あれば、なんだって言うんだ……。慣れたことだと本人も言っていたし、きっとアッシュを求めたことに深い意味などない、はずだ。
アッシュというより庶民の目から見たキムラスカの王族は、まだ歴史の浅いダアトという国のいかにも質実剛健といった王族と比べて、洗練されて華やかで、かつ享楽的なイメージがある。男でありながら爪の先まで手入れされた──とはいえ、それはこの旅のうちにずいぶん荒れてしまっていたが──全身が、それを裏付けてもいた。美容にかける時間と金のゆとりがある生活をしているものたちならば、乱痴気騒ぎやご乱行が日常茶飯事だと言われてもそれなりに似つかわしいのかも知れない。ルークも生まれながらの高貴な血に連なるもので、幼いころからそのような環境で過ごしていたはずだ。きっと、彼には誰もが──男も、女も──魅せられ、夢中になったことだろう。だが、これまでどのように爛れた生活をしていたとしても、ルークには不思議と一点の汚れもない清潔感が漂う。アッシュには、それこそがルークの本質に思えた。
「半日も歩けば見えてくる。かなり大きな川だし、キムラスカも通ってるから、お前も知ってんじゃねえか」
「おれ、地理には詳しくないんだ」少し恥ずかしげにルークが告白した。「どうせ、王太子宮と王城以外のところには行けないんだし、知りたいと思わなくてさ……」
「俺もわかるのは実際に行ったことのある場所ばっかで、範囲は狭えよ。お前も、ダアトの獣道には詳しくなったろ」
「いつか誰かに、『ダアトを旅したことがあるそうですね、旅の話を聞かせてくださいな』って言われたらなんて答えりゃいいのかな」
「魔物に追われて洞窟を彷徨った話は外せねえだろうよ」
「初めての罠で熊の子がかかった話もしたいなー」
「あれは参ったよな……。せめて食えるものを引っ掛けようぜ」
「狙ってねーっての! 『熊も食えるんだが』って、アッシュだってあのとき放すの悩んでたじゃん!」
「仔熊を食ったら親熊が追ってくるかも知れねえと悩んだんだ」
夕べあんなことがあったのに、なぜ今日、ただの友人同士のようにこんな話をしているのだろう……。
「『一体何処を旅されてたんですか殿下』って絶対突っ込まれるな」
「『え、ダアトだけど?』って?」
「よしてくれよ、ダアトに変なイメージがついちまう」
何事もなかったように、このまま別れるのは辛い。だが、アッシュが夕べの出来事は夢ではなかったかと思うほど、ルークの態度は自然だった。
一緒にいられるのももう少し。解放すると一言言ってやれば、ルークは喜ぶだろう。その顔を見たいような気もするし……見たくないような気もする。胸に抱いた真の望みを告げたら、どんな顔をするだろうとちらりと思ったが、自分が決してそれを口にすることがないことも承知していた。その望みは……叶ってしまうことこそが、アッシュにとってはその後の苦しみを誘う、恐ろしいものだったから。
自分がみっともなくうろたえずに別れを告げることが出来るのかも自信がないまま、アッシュは目的地へ向かって歩き続けた。
だがアッシュの不安は、幸か不幸か結局杞憂に終わったようだ。
途中途中で食事休憩などを入れながら、なんとか日没前には目指す場所へたどり着いたと思っていた二人を、再び魔物の群れが襲った。
「ライガがなんでこんなとこに?!」
「ライガっ?! あれが……?!」
森の王といっても大げさではない魔物の目、白く底光りする光が一体何対追ってくるのだろう。一体でもかなりやっかいだというのに、何十体という群れが二人を襲ってくる。
「さすがに二人じゃきついな──三十六計逃げるに如かず、だ。ルーク、このまま真っ直ぐ走れば右に桟橋がある!」
「そ、そっか! 川に出ちまえば……!」
「誰かが対岸に渡ってなければ、船があるはずだ」
幸運なことに、短い桟橋には小舟が繋がれたままになっていて、ルークが歓声をあげた。
「アッシュ! 船が!」
「先に乗れ!」
ルークが小舟に飛び乗り、アッシュが杭に幾重も巻かれたもやい綱を解いて行く。「アッシュ、早く……!」
焦るルークの前で、アッシュは外した綱を握ったまま、静かにルークを見つめた。
「アッシュ、急げって……」
「ルーク。……ここでお別れだ」
綱の端を握ったまま、アッシュが寂しげに笑うのを、ルークは目を見開いてぼんやり見つめた。「なに……」
「このまま川を下れば、キムラスカとの国境に出る。これから先は、お前の思うように生きろ。お前の本当の心に従え。国のために、立場のために、お前の心を殺すようなことは絶対にするな、いいな?」
「何……言ってんだよ、アッシュ……! 早く乗って! 乗れって……!」
一頭のライガが追いついてきたのに気付き、半ば悲鳴じみた声で懇願しながら、ルークは剣を投げつけた。剣は真っ直ぐにライガの額を貫き、肉を断ち、骨を割って地面に縫い止める。それを振り返って確認したアッシュが口笛を吹いた。「すげえな。火事場のなんとかいうやつか」
皮肉でもなく、からかいでもなく、アッシュは感嘆の声をあげ、剣を鞘に収めて剣帯から抜き取り、ルークの手を取ってそれを握らせた。
「アッシュ……いやだ、いや……。おれを……おれを王都に連れて行ってくれるって、言ったじゃん……」
「王都に行けば、お前は殺されるかも知れねえ」
「そんなこと……っ、いいんだ、わかってるから! いいんだ! 連れてけよ……!」
アッシュは一瞬驚きに目を見張り、笑った。「いやだ」
「アッシュ!! ──連れて行ってよ……! おれがいないと、恩賞が!」
「もう貰った」
「え……?! いつ、そんな」
呆然とアッシュを見上げるルークの手を、アッシュは両手で包み、そっと引いた。魔物の唸り声が近い。もう、時間がない。引かれるままにルークがアッシュの胸にぶつかってくる。昨夜散々嬲られ、赤くぷっくりと熟れたルークの唇に、アッシュはかがみ込んで優しく触れるだけの口付けを落とした。反射的に目を伏せたルークの耳に、アッシュは低く囁く。
「『王子様』は、最高の恩賞だった」
「そ、んなもの……っ!!!」
大声を上げて抗議しようとするルークを、アッシュは思い切り押した。ルークが尻餅をつくように舟に倒れ込むと、上にぱさりともやい綱が放られる。ルークが跳ね起きる前に、アッシュはあらん限りの力で小舟を蹴り飛ばした。流れの速さに小舟は一度回転し、戸惑うように舳先を左右に揺らしたが、うまく流れを掴むと、矢のように岸辺を放たれた。もう、目の前にライガの群れが迫っている。「アッシュ……!」
「行けっ!!」
「アッシュ! アッシュ! アッシューっ!」
みるみる小さくなっていくアッシュは、もうルークなど見ていない。突き出した両手が、急速に光を増すのが見えた。
急速に引き寄せられ密度を増して行く音素に、知能の高い魔物の中でも突出して秀でているライガの群れは女王を中心としてじりじりと後退を始めた。
「お前たちには感謝している。グズグズしてる余裕がなかったおかげで、変に悩まず手を離すことが出来た」
父や村人らが魔物を狩るために森に入ったことを考えれば、このように強力な魔物の群れを放置しておくわけにもいかない。幸いにもアッシュには力があり、巻き込む可能性を考えなければならないルークはもういない。森を傷つけたくはないし、後々余計な詮索を招くのもごめん被りたい。
かつて自分の限界が知りたくて、力を解放してみようと思ったことがあった。だがどこまでも膨らみ続け、限界の見えない力が恐ろしくなり、以降アッシュは小さな力のみ完璧に制御出来るよう努めてきた。おそらく限界にはほど遠いとはいえ、これほど大きな力を使うのはだから初めてになるが、しくじる気はしなかった。身の内から迸る力が大きくなり、同時に手の中の光も増して行った。ライガが泡を食ったように逃げていく。
「逃がすわけにはいかないが、礼代わりになるべく楽に逝かせてやろう」
木を、石を、草を、花を、獣を、昆虫を、すべてあるがままに。悪意あるものだけをすべて音素に。
かつてないほど、光は素早く穏やかに、それでいて周囲を白一色の世界に帰るほど強烈に広がっていった。
目を閉じて、深く息を吐き、軽く開いていた手を握ると、解放された力の残滓が身の内に戻って行く。身体が少しふらついた。神ならざる身でそれに匹敵する力を行使した代償としては、むしろ小さい方なのだろうが、ルークが怒るまでもなく身体に多少の負担がかかるのは当然のことだ。アッシュはよろよろと歩いて、深く地面に突き立ったルークのカトラスを掴んだが、力が抜け、小刻みに震える腕には引き抜く力がなかった。柄を握ったままずるずると地面に座り込む。すぐに動くべきだとはわかっていたが、身体がいうことを聞かない。ふと人の気配を感じ、どきりとして視線を動かすと、血のひとしずくも残らない鏡面のような刀身に、己の顔が映り込んでいた。「……なんて顔してやがる……」
苦笑し、手を伸ばしてその像を弾いた。
「……ま、こっちの剣の方が上等だしな……」