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年収24年分

いつだったか『銀二貫』という本のことを日記に書いたことがあります。

一昨年だったかな? その年に読んだ本のベスト1でしたが、残念なことにそれからこれまで、それを越えるものには出会えてません。高村薫先生の『冷血』もまだ積まれた状態ですし……。(高村先生の本を読むときは気力体力が充実して脳も活性化しているときでないと>< 歳を取るごとに理解力が落ちている気がするのです……。と言い訳しつつさらっと読めるものばかり読んでいるから落ちる一方になるのかも)

銀二貫の価値の重みが、いまいちわかりきっていなかったのですが、このたび石見銀山に行ったとき、やっとそれを知ることが出来ました。世界遺産になる前はなかった石見銀山世界遺産センターなるものが出来ていて、初めてなので入ってみたのですが、展示品の一分銀やら丁銀やら見ているとやはり母と『銀二貫』とはいかほど、という話題になりました。(母は私が送った本を読んで、夜中に声を出して泣いてしまったそうです)

ちょうど通りかかったスタッフさんに聞いてみますと最初に「35kgくらいですかねえ」という返答が返り、いやいやそうではなく、と二人で『銀二貫』のあらすじを話し、現代だとどのくらいの価値になるのか、と質問したところ、了解してくださったスタッフさんが一枚の丁銀だったかな、そこらへんはよく憶えてないんですけどそういう細い小判状の銀を差して、「これ一枚が、江戸時代の庶民一人の一年分の年収になります。銀二貫ですとこれが24枚分になります」と説明して下さいました。現代の貨幣価値に直して説明されるよりガンときました。(銀二貫は大体現代の貨幣価値に換算すると200万円くらいだそうです。そう聞くといまいち大変さがわかりませんよね)

年収24年分……。

それを店が火災を逃れたお礼に天神さんに寄進しようとしていたのに、人助けにぽん、と投げ出した。(そのときそれがほとんど全財産)主人公はいうなれば年収24年分で買われてきたわけです。その後も頑張って頑張って、やっと貯まった銀一貫、そしてまた二貫、と人のために投げ出していき、小さかった主人公が三十を越す頃、やっとそれが寄進出来る。ただでさえすごい話だと思っていたのに、こう聞くと壮絶だとすら感じます。主人公たちが必死で商売するのは、この小説中では銀二貫を天神さんに寄進するためなのです。

最初に旦那さんが主人公のために投げ出した銀二貫を初め、途中で使ってしまったお金がどうなったかはお読みになるとわかると思います。スタッフさんといろいろ話したあと、「すみません、その本のタイトル、もう一度教えて下さい」と言われたのですが、お読みになって下さってたらいいな、と思います。

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料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。

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