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新しいお茶碗

ずいぶん昔から、食器にこだわりがあります。

独身のころから、一つ一つ吟味して買ってきました。大体同じ種類のものは2、3個買うのですが、柄や色合い、景色を眺め回し、実際に持ってみて、気に入ったものが一つしかないときは一つしか買いません。

お茶碗は一つづつ買っていて、織部、萩、備前で三つ持っていました。織部、備前は自分で買ったもので、萩はいただき物です。(くれた方は特に私の好みを吟味されたわけではなく、いわばお中元やお歳暮のノリでした。好きでも嫌いでもない無難な感じのお茶碗でした)

結婚してからは織部を主人のお茶碗に決め、私はもっとも気に入っている備前を独身時代に引き続き使っていましたが、二年近く前にそれを不注意で割ってしまいました。号泣しているところに主人が帰宅してお休みに買いに行こう、と言ってくれたのですが、そこいらで手に入る物ではなく、また値段を聞かれたうえドン引きされてしまいました。主人は百円ショップのお茶碗でもいいという人です。人によってお金のかけどころは違いますから食器に興味のない人はそれでいいと思います。それから今まで機会があるたびお茶碗を見ていたのですが(窯元に行ければほんとは一番いいんですが)気に入ったものがなく、それから一月も経たないうちにその萩焼の茶碗も割ってしまって(主人です。思い入れがないので「あら。怪我ないー?」のコメントしか出なかったです)私はお茶漬け用にしようと買った本物のお茶碗を飯茶碗としてずーっと代用してました。主人はとにかく割れたときに号泣するような食器を買うな、とりあえず適当な茶碗を買えと無印とかニトリとかで食器のコーナーが目に入るたび言いましたが、無視しました。愛せない食器は、食器も可哀相な気がするんですよ。

夏の帰省で萩にいく時間の余裕はなく、今回も「レンタカー借りて遠出しようか、萩とか」とさりげなく持ち出したところ、母に「一泊で出雲行きたい」と言われ断念。せめて出西窯、と思ったけどそんな時間取れず、観光地近辺の店を何店か覗いたけど、ぴんとくるのはありませんでした。どれも素敵なんですけどねー……。これでなくちゃ、と目が離せなくなるものはなかったんです。

それが空港のしょぼい売店で「萩焼フェア」なる幟を見て、期待もせずに時間つぶしに覗いたところ、小ぶりのお茶碗からまったく目が離せなくなりました。薄紫の肌で、珍しいことに桜の絵が入っている。私は小皿やぐい飲みなどの小さな食器以外で絵入りのものを気に入ることがあまりないんですが、これはすごく目に触らない。近くに同じ作家さんの絵のない似たような色合いのがあったんですけど、それに比べるとかなり見劣りしました(私目で)。一度他のにも目を向けたんですが、視線が上滑りしてそこへ戻るんですよ。

持ってみて全体を眺め回していましたら、「それ、すごく素敵でしょう。今日入ってきたばかりなんですよ」と言われ、あ、私のとこに来るお茶碗なんだと思ったので、即決めしました。その後もせまーい売り場に結構な時間居座って千円セールの小鉢を二つ追加。

昨日一日水につけて置いて、(焼き物によってはぬかで煮立てる必要のあるものもありますが、萩焼は水に漬け込むだけでいいのでらくちんです)今日初めてご飯ついでみました。長いこと大きなお茶椀を使ってたので違和感がありましたが、出雲で買った赤米を混ぜて炊いた薄いピンクの玄米が綺麗に映えてほくほくです。私のこだわりをぐずぐず非難してた主人も、「すごく森川ちゃんっぽいね。似合ってる」と不思議なコメントを。普通食器へのコメントでは出ないようなコメントですが、それなりに褒めてくれたのかなと思います。

一年前に万一のときに備えて金継ぎの本と簡単なセットも買いました。(これで号泣することはないと言い放った私に主人は言葉を失っていました……)金継ぎするとまた景色が変わって素敵な感じになるので、実はなにかを継いでみたくてしかたないのですが、大人二人の家庭でそうそう食器が割れることもないですしね^^; こういうことをしろうとが試みることが出来ると気付いていたら、あのお茶碗取っておいたのにな……。割れたり欠けた食器は縁起が悪いと母が嫌っていたので、早々に処分しちゃってたのです。

まあ、割らないにこしたことはないので、大事に使うつもりではいます。なかなか出番のない器というのはありますが、割れるのが怖くてしまい込まれた食器には価値はないと思うので……。

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料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。

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