「萩を揺らす雨」から「大誘拐
「萩を揺らす雨」は借りパク上等(つまり返してくれるなと)で貰った最後の本です。
コーヒーと和食器の店を営んでいるおばあちゃんが、常連の話からご近所のちょっとした謎を解いて行く、という聞くだけで面白そうな本なんですが、正直一話め以外はあんまりぱっとしなかったです。おばあちゃんが若い男を顎で使う、というシチュエーションが結構好きなので、主人公の草さんが被害者を救い出すためにご近所に入ってる空き巣を捕まえて雇う、というのはかなりツボだったんです。てっきりこの二人がコンビを組んで事件を解いていくのかと思ったのに……。ご近所の事件なのですから死人も出ませんし、そもそもそういう謎を解くものではないので、そこに「おおおっ」という新鮮な驚きを正直期待しません。登場人物同士の掛け合いの面白さなんかで読ませて欲しかったな、と思いました。
おばあちゃん+若い男とくればいろいろありますが真っ先に浮かんだのは『大誘拐』です。映画は観てないので出来のほどは知りませんが、小説は私の好きなミステリランキングの20位以内には絶対入っている!
はした金(大刀自にとって)目的で誘拐された大富豪の大刀自が、犯人グループの若者たちに見所を感じて身代金を100億に釣り上げさせ、自らがそのグループ『虹の童子』(大刀自が命名)リーダーとなり、財産を食いつぶすだけの腐抜けた子どもたち、莫大な相続税を一挙になんとかして大団円に持ち込む、痛快極まりない小説です。
「萩を揺らす雨」を不完全燃焼で読み終わったあと、すごい読みたくなって読み返しました。これもう表紙がaとれるほど読み返しているんですが、それでも飽きさせないのはすごいです。もう綺麗なのに買い替えたいんですが、小口の親指が当たる部分が手あかで真っ黒になってて、ずっと持ち歩き、読み返してきた歴史を思うとなかなかなあ……。最近はここまでの力を持った本になかなか当たらないのが残念です。