パラレルALその後:::02:::
日付こそ中編発表時のものですが、本日は2014年9月14日、内容は全然変わっています。こちらが最初に考えた形に近いと思います。
当時はfc2の日記を利用していて、さらっとネタ的に書いているパラレルはそっちで直接書いていたのですが、保存したのにされてなかった×2回によって気分が萎えてしまい……。大幅に縮小したのが以前の前、中、後編になりますが、ちゃんと男子に見えるようになってたルークがわざわざ中性風にした理由がぼけてしまってたのです。
当時考えていた話も時間の経過とともに変わってしまいましたが、こちらの方が本来の形に近いと思います。
ちなみに当時(2011.12.25、わお、クリスマスだ)の日記は、
『中編、丸々いらないんですけど(アッシュを婿に欲しい兵とかは独身者ばっかの兵舎にいないし)ああ、趣味なんだな、丸出しだなと思ってぬるく笑ってやって下さい。ルークがモテるのが楽しいのです。
手の甲にキスは、実際にはフリだけで本当にしたりはしないので、別に男にキスなんか!!と思われたわけではありません。
ついでに名前も、ダアト関係者ではネタが尽きたので。ナタリアに奥義をくれるお爺さん(? ですよね)の名前が名字もあってちょうど良かったので使っちゃいました。
ところで、今日、私の持ってるDVDの中で主人が観たことないという『ダ/ニー/・ザ・/ドッ/グ』を久しぶりに観たんですが、パラレルのことばっか考えてたせいで、ダニー=アッシュ、ヴィクトリア=ルーク脳内変換で大いにニヨニヨしてしまいました。顔がヤバいと思ったので、途中でマスクしてニヤケ面を主人に隠しました。互いに息を潜めて様子を窺いながら首輪を外すとことか、元々が年の差好きを刺激してくれるニヨニヨシーンなだけにめちゃくちゃ萌えました。
あーもうすごく残念な頭になってるってことは自分で自覚しています。大好きな映画を穢しやがってと思われたらほんとにごめんなさい><
以下、パラレル続きです。
読まないで後編でもぜんっぜんおkです!』というものでした。
普通だったらそのままコピペしてるんですが、内容が合っていないので書き換えました。闘犬を実際に書いたのは2012年の灰の日なんですが、妄想はこのころからだったようです(゜Д゜)
「ルーク! こっちこっち!」
駅馬車から降りたとたん、迎えの人物を探すまでもなく、声がかけられた。
「ライナー! シンク!」ルークは大きく手を振って、二人の方へ駆け寄った。満面の笑みを浮かべて迎えるライナーとは逆に、シンクが嫌そうに後退する。
「──来たね。あの……すっごく目立ってるけど、大丈夫?」
「ああ、問題ない」
ルークが笑って頷くと、ライナーは少しだけ心配そうに眉を顰めたあと、頷いた。
毛先へいくに従って金色へと色を変えるスカーレットの長い髪は、華やかに人の視線を引き寄せる。
その、光のヴェールを纏ったような美しい髪に、通りすがる人々は一瞬立ち話すら止めてその人を見やった。一体どんな香料を付けたものか、野の花と柑橘の混じった香りがほんのり甘く鼻孔をくすぐる。息が止まったように魅入られ、そして慌てて視線を逸らし──今度は横目で窺うのだ。
「ねえ、それ、わざとなの?」
「ん?」
嫌そうに少しだけ離れ、そのくせ連れだと思われないのも業腹だと言うわがままな位置取りでシンクが問うと、ルークは「何が?」と首を傾げた。
「ボクらは君の性別を知ってると思ってたけど、今ちょっと自信がなくなったよ。ボクらでもそうなんだから、知らない人には絶対わかりっこない。女の人はズボンをはかないから、多分男だろう、でも間違ってたら申し訳ないから、断言しないでおこう──十中八九そう考えると思うよ」
「ふふ、そう? うん、わざとだ」
元々ルークの身のこなしは育ちのせいもあり優雅でしなやかだ。歩く姿もまっすぐに芯が通り、まるで流れる水のよう。歩き方を習うなんて庶民にはぴんとこない話だが、ルークは細かな所作から歩き方まで訓練されている。間違っても「男のように」がに股でどすどす歩いたりはしない。その洗練された所作だけで十分に衆目を集めるのに、透き通るような白さの小さな顔は、教会に飾られた天使像のように完璧な美貌だった。どうしてもその顔に欠点を見つけたい者なら、若干下がりがちな目尻を指摘するかも知れないが、ルークの場合はそれが硬質な美しさの中に婀娜めいた色気を滲ませるものとなり、近寄りがたさを軽減する効果にもなっていた。
だが、ルークはその気になりさえすれば目立たないよう周囲に埋没することもできる。それなのにオペラハウスに立つプリマドンナのように視線を引き寄せているのは、むろん彼なりの意図があるのだ。
「め、目立ち過ぎじゃない?」
「いいんだよ」
周囲の反応をそっと窺いながらライナーが囁くと、ルークは目が合った通りすがりのカップルに流し目で微笑みかけた。
男女両方ともが頬を染めたのを確認して頭痛を堪えるようにシンクが額を押さえる。それを見て、ルークは少しだけ口を尖らせた。
「おれが帰ったあとには二度とこんな問題が起きないようにしないとなんないんだ。おれにだって余裕がねーの! 毎日クソ忙しいのに、何かあるたびに王都に上るわけにはいかねえんだから」
その姿からは想像出来ないほど、ルークは無造作な口ぶりで言い放った。
「ちょっと。その顔で『クソ』とか言わないでくれよ……」
ライナーは美しい桜色の唇から零される言葉にいささかがっかりしてそう嗜めたけれど、何度かの手紙のやりとりからもどこか綽々と余裕があるように感じたルークが、実はそれなりに苛ついていたようだと知って、少しばかりほっとするところもあった。
手紙の文体があまりにも冷静だったため、アッシュは本当に愛されているのだろうかなどど、馬に蹴られそうなことを考えたのだ。だが、やはり杞憂だったらしい。
キムラスカの元・王太子。
ルークは気取らないし、言動からその姿を思い浮かべるのは難しいが、明らかにそこら辺の庶民と一線を画した容姿と所作が、その身分を裏付ける。
そんな人が生活に困窮している庶民の男を本気で想ってくれるのだろうかと、実際に会ってみるまではみんな不安に思っていたし、アッシュの友の一人として、ライナーにもそれを疑う気持ちがあったが、男友達の横に男が寄り添っているにも関わらず、その姿はとても自然に感じたし、もっと率直に言うなら──うらやましいとも思ったのだった。
目立つことをしきりと気にするライナーを尻目に、ルークは楽しげにあちこちの店先を覗き、家族たちへのささやかな土産を物色したりしている。ここはダアトの王都で最も賑やかな通りだ。一本裏の道を通って目的地へ向かうことだって出来るのに、ルークは義姉妹たちが喜びそうな、話題の店で土産を買いたいのだと言い張った。
むろん本当にその目的もあっただろうが、おそらくはこの際できるだけ多くの者の目に触れておこうという意図もあるはずだ。それはとても危険なことのようにも思えたが、ダアトの下町に自分を見知ったキムラスカの人間が歩いている確率は低いと、ルークも譲らない。
ルークはその容姿や服装で、華やかに人の目を惹きつけていた。
義父に頼まれた新しいナイフや、野菜の種なんかも熱心に物色してはいるが、覗き込む店の多くは義母や義姉妹たちが喜びそうな小物やレース、化粧品や高価なチョコレートを扱う店だ。店先では時に笑顔の大盤振る舞いをし、店員だけでなく周囲の客にまで取り巻かれた。良い客引きになってくれたとこまごまとした店の売り物を包んで持たされることもある。お使いに来ていた貴族の奥方の侍女に絡んでいたならず者を叩きのめした時には、ルークの狙いを後押しする天の計らいかと思うほどだった。お礼をするからと真っ赤になって言いつのる娘に、ルークはしれっと近衛の訓練所に夫を訪ねるところだと話した。
要するに、ルークは目立てるだけ目立ちながら、じりじりと目的地へ向かうつもりなのだった。
「……余裕が無いのはわかるけど、君、ちょっと怖いよ」シンクはそう言ったが、その科白には恐れではなく呆れがある。
ライナーも大きく頷いて同意を示した。その顔は薄らと恐怖に覆われていた。シンクが示唆しているようその徹底したやり方にではなく、純粋に目立ちすぎた友人の妻が失われることを恐れたのだ。
「こっちに行けば、師団の寮や訓練所がある。近衛はこっちだ」
ライナーが言うと、怖いと言われてふてくされていたルークは少しだけ逡巡する様子をみせたが、すぐに頷いた。「オリバーやハイマンたちは、今日は勤務なんだよな? 後で会えるかな」
「会わないで帰ったりしたら、恨まれてしまうよ」
「良かった」
当然だと言いたげなライナーの言葉に、ルークはほっとしたように笑った。
決然と近衛連隊の訓練所に現われたルークだが、その門の前で再び迷うように立ち止まった。
「どうしたの? こっちだよ」
「いや、あの……」連絡をしたら当然来るなと言われるだろうから、もちろんルークが王都に来ていることなどアッシュは知らない。「……アッシュは怒るかな、やっぱり……。もし……もしもさ。嫁が年上の男だなんてあんまり知られたくないとか思ってたら……」
「……君、馬鹿なの?」
呆れ果てたようなシンクの呟きを、ライナーが慌てて嗜めた。「もう、シンク! ……あのさ、ルーク。手紙に結婚してるって言うなら証明書を見せろって人もいるって書いたよね。そういう口実で断ってるって思われたんだ。だからアッシュは相手が男だから結婚証明書が下りないってちゃんと言ったんだ。けど、それさえ口実だって思われて。アッシュはその……普通に女の人の所……なんて言うか……」
「あ、大丈夫、知ってる。本人から聞いた」
「えっ? アッシュ……」
「昔の話だろ。それに、付き合いってものもある」
アッシュはルークの周囲にいた貴族の男女とは根本的に考え方が違う。ベッドを共にするだけの関係を気軽に楽しんだりはしない。上官たちに引きずられ、断りきれずに娼館へ行ったこともあるようだが、彼が女性をベッドに誘うときは、結婚を決意した場合だけのはずだった。
そんな彼が、一度だけでいいから抱いてくれと泣いて強請る面倒臭いルークを、如何なる決意で受け入れてくれたのか。ルークはもちろん、最初で最後の思い出のつもりでいたけれど、アッシュの心中はそんな単純なものではなかったのだ。
「アッシュが怒るのなんか、初めからわかってたはずだろ。こんなとこまで来て今更なんなの」
「シンク、わからずやのアッシュに思い知らせてやれとか息巻いてたくせに。あんまりルークを苛めるんじゃないよ」ライナーはそうシンクを嗜めてから、ルークに向かって苦笑した。「もちろんアッシュは怒るだろうけど。でもそれは君が危険を冒して王都に来ちゃったからだよ。君と夫婦であることを隠そうなんて男じゃないことは、君もわかってるんだろ?」
もちろん、ルークはわかっている。そんなの、アッシュの性格から一番遠い行為だ。
なんだかんだと強気で言っても、結局ルークはアッシュの怒りが怖いのだ。
結婚してからもそれほど多く一緒に過ごせたわけではない。いくら農作業があるからと言って、もしもルークが王都に上るのに何の障りも無かったら、アッシュはルークが男であることなんかちっとも気にしないで、きっと皆と同じようにルークを傍へ呼び寄せ、一緒に暮らしたはずだ。麦の刈入れなど、人手が必要なときだけ戻れば良い。これまでは人を雇っていたのだから、それでも支出は楽になるはずだった。
でもルークは普通の夫婦のように、夫と一緒に暮らすことが出来ない。
逢いたくて逢いたくて、アッシュに触れたくて、抱きしめて欲しくて、時折辛くて仕方が無いときがある。優しい舅や姑、賑やかで陽気な義姉妹たちですら、その寂しさは埋めることが出来ない。アッシュでなければ。
そんな気持ちになったことは未だかつてなく、だからこそアッシュを如何なる形でも失うのは怖い。失望されるのも、呆れられるのも──。
「逆効果になったりしねえかな……?」
「怖いなら帰ってもいいんじゃないの。もうさんざん目立った後だけど、少しでも早い方が身バレの心配も少なくなるんだろうし。──ま、アッシュはこれからも煩わされ続けるだろうけど。そのうちお偉いさんに泣きつく奴が出て、断れないほど上の身分から圧迫されるようになるかもしれないけど。そうなったらアッシュはあっさり退役するんだろうし、今ここで逃げ帰ってもたいして結果は変わらないと思うね、ボクは」
「シンク!」
「痛っ!」
シンクは実は心配性だし、もしもルークに何かあったら迷わず友達のために戦う決意でいることも気付いていたけれど、ライナーもさすがにむっときてシンクの臑を蹴飛ばした。
だが、ルークも長い宮廷での生活で、人の心が秘めた真実には聡い。
弱腰になってしまった自分を恥じたのか一瞬だけなんとも情けなそうな表情を見せて、シンクに笑いかけた。
「辞めて帰って来てくれたらおれは嬉しいけど、なんだかんだ言ってアッシュはここが気に入ってるもんな。お前も寂しいんだろ、それは」
「馬鹿じゃないの」
ふんっとシンクが顔を逸らすが、その目元が薄ら赤くなっているのにライナーはしっかり気付いた。
「じゃ、行って来る」
ルークは決然とした表情でまっすぐに前を見据えた。