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パラレルAL 30話

歌詞はちょっと、あんまり愛溢れて明るい感じのはないですが、曲の感じとしてはパラレル書いてる間はスクリーモとかって気分じゃなくて、エモ、或はシンフォニック、ゴシックメタルがぴったりでした。LIV MOONも聴いてましたが(新譜予約済みだよのお祝いも兼ねて! 今回、CDのみとDVD+のジャケットがあんまり変わらなくてヨカッタ;; 前作GOLDEN MOONのジャケットはどうしてもDVD+バージョンの方が良くてものすごい苦悩しましたので! 密林などでジャケの確認をしていただければ、なんでそんなに苦悩したのかファンでなくても一目瞭然だと思います!!)、やっぱり邦楽は歌詞を追ってしまうから何か書いてるときにはちょっと向かない。洋楽のいいところは悲劇感たっぷりの歌詞でも気にせず聞き流せるところです! あんまり聞き取れないので!(自慢にはなりませんが……^^;)nightwishの新譜も来年一月に発売なんですが、急いで買わなくても……と思って予約してなかったんですけど……どうしようかな? メタルはほとんど聴かないんですが、シンフォニック、ゴシック、オペラティックのジャンルになるとオタクの胸を直撃するものがあると思います。

以下、パラレル続きです。
纏められればあと一話? 最後なので何か付け足しちゃって二話ってとこです。あともう少しおつきあい下さい。

「兄が関心を引こうと努力するのは、後にも先にも父しかいなかった。父の関心を自分に向け続けるために、母に似た容姿を保ち続けるために……あのように歪んだ姿になったのだろうな。滑稽で、哀れだろう? あれが、キムラスカの王太子の真実だなどと」
「……」
 青年は無言で視線を落とした。受けたであろう衝撃は、すぐに受け流され、容易に感情を悟らせようとしない。それは苛立たしくもあるが、警戒されるのはむしろ当然と、フレイルはそんな青年を観察するように見つめた。
「……兄に手を付けたのか?」
「──っ? フレイル様?!」
 アルマンダインが目を剥くのを、手で黙らせると、青年が眉を顰めてフレイルを見据える。
「……その言い方は気に入らねえ」
「ほう? では『抱いたのか?』或は『愛し合ったのか?』と言い換えればお気に召すのかな?」
 嘲笑まじりのフレイルの揶揄に、青年は相変わらず気に入らぬ気な表情をしていたが、反論はしなかった。それを見て、今度はフレイルが眉を顰める。──この男、気に入らない。野営地で兄に会ったときのように、胸の奥で、ちりちりと何かが焼ける。
「……兄上が、お前の何処をお気に召したのかわからん。兄上は自分のことをなにかと過小評価していたふしがあるが、父以外の誰にも心を見せず、誰も愛さない氷の天使の、その純潔を散らすのは何処の誰かと賭けまで行われ、誰もがまだ見ぬ兄の相手に嫉妬し、身を焦がしていたというのに……。その兄が唯一身も心も許したのが、異国の、しかもこのようにむさ苦しい男では、彼らも納得がいくまいよ」
 一番納得がいかないのは自分だが……。兄が父以外の誰も愛さず生きて行くのなら、良かった。それならまだ許せたのに。あるいは気には入らないが、土を耕し、家畜を追って暮らす、そんな純朴な田舎娘が横に立つのなら。
 青年は一瞬だけ呆然としたようすを見せ、やがてゆっくりと目を伏せ、何かに耐えるように眉を寄せて唇を噛んだ。
「そんな……まさか! イル様が……そんな……」
 赤くなったり青くなったり忙しく表情を変えているアルマンダインを横目でちらりと見やり、フレイルは彼もまた、亡き母に生き写しだというルークをそれなりに思う気持ちがあり、それゆえに危険視もしたのだという皮肉に笑った。
「……あいつ、本当に死んだのか?」
「貴様っ! 言葉を慎めと……「アルマンダイン!」」
 視線を青年に向けたまま、顔だけを僅かに部下に向け、フレイルはその言葉を断った。「怒りはわかるが、黙っていろ」
「……っ。は……」
「確認をしたのは私と、このアルマンダインだ」
「……あいつの死に関しては噂が二つある。負った傷が元でというものと、あんたに暗殺されたというものだ」
「……あれはお前の剣か? 身の丈に合わず、鞘から抜けないようで、抜き身のまま持ち歩いているようだったが……実にうまく使いこなしていた──お前が使う剣に少し似ていたように見えたかな。味方だったはずの兵にも躊躇なく剣を振り抜いていた」
 青年はその光景を見通そうというかのように、遠くを見つめるような透明な表情を見せ、ゆるゆるとフレイルに視線を向けた。「あいつは、言葉に出したことこそなかったが、あんたと仲良くしたがっていた」
「知っている」
「よく殺せたな……!」
 青年は汚いものでも見るような目でフレイルから目を逸らした。固く握った拳が細かく震えている。それを見ると、フレイルの胸が少し、すいた。
「私も、兄を愛しているのでね」
「……」
「だからこそ、いきなり兄の人生に飛び込んできて、兄の心をかすめ取っていったお前が、私は憎くて仕方ない。正直言えば殺してやりたいくらいだが、ここはダアトの王の膝元で、それが出来ぬのが残念だ」
 憎しみの込められた目付きにほんの少しだけ溜飲を下げ、フレイルはそれだけ告げると、もう用はないとばかりに中庭を後にした。今更兄の愛したものの正体が分かったところで、寂寥感と苛立ちは増すばかりだった。知って良かったのか、知らぬ方が良かったのか、わからない。──ただ、あのような下賤の出の男を羨ましいと思う気持ちが己にあることなど、気付きたくはなかった。この世の片隅で、身分が低く泥臭い、しかし純朴に笑う義姉と暮らしているのだと思っていたままのほうが気が楽だったのかもしれない。
「フレイル様……。よろしいのですか? あのような男……」
「……お前、泣いているのか?」湿った声で伺いを立てるアルマンダインに、フレイルは笑った。「……仕方あるまい。ここでは無理だ──それに、あの男に手を出しては、あの人に恨まれよう……」
「フレイル様……」
「……ふ。結局、歪んでいたのは父と息子、全員同じか。だが、アルマンダイン。私はあの人を兄と思い、無邪気に慕えるほど側にいることを許されなかったのだ……」

「……そこで何してる。出てこいよ」
 声をかけると、剣を二本抱いたシンクを初め、アッシュと最も仲の良いもの数人がぞろりと出てきた。シンクは怒ったような顔をして顔を逸らしており、他のものは泣いたり、深く俯いている。
「何泣いてんだよ。……オリバー、顔を上げろ」
「俺たち、お前が心配で……」
 剣を佩いて他国の王族の前に立つことを許されなかった自分を心配して忍んでいたのだろうから、責める気など毛頭ない。アッシュは苦笑して、ふて腐れているシンクから剣を受け取った。シンクがこんな顔をしているときは、とても相手を心配しているときなのだ。素直じゃないので、大抵心のうちと正反対の顔をする。
「ハイマン、ありがとな。助かった」
 借り物だった剣を泣いている同僚に押し付け、カトラスだけを大切そうに腰に戻す。「──これな。形見になっちまった……」
「ア、アッシュ、俺たち……こないだ、ごめん。アッシュの気持ちも知らないで、興味本位で……」
「俺も……すまない。すまない、アッシュ……俺……」
「ああ……? はは。俺が話さなかったんだから、当然だろ。気にしてもらうようなこっちゃねえ。……だが、黙っててくれるとありがたいかな」
「黙ってるよ! 誰にも話さねえ……」
「助かる。……悪い。少し、一人にしてくれねえか……」
「あっ、ああ! ごめん! 気付かなくて……」
「アッシュ、賞金受け取りに来るようにって、宰相閣下が。……あと姐さんが稼がせてもらったから何割か支払うって……」
「ああ……後で行くよ。──わりいな」

 慌てて去って行く彼らがいなくなって、アッシュはずるずると噴水にもたれて腰を下ろした。霧のように細かな飛沫が降り掛かり、少しずつ髪を、顔を濡らして行くに任せ、空を仰ぐ。うっすらと小さな虹が出来ているのに気付き、手を伸ばしたが、幻を掴むように幽かにそれを揺らがせただけで、ため息をついて何も掴めぬ手を握った。

 初めは十二、三くらいかと思っていた。そのような歳の少年が、自分とほぼ互角に戦うのに興味を持ったし、いい金づるだとほくそ笑みもした。すぐに見かけほど子どもではないことに気付き、十五、六に訂正したが、まさか三つも年上だったとは思いもよらなかった。この方がモテるのだと、女と見紛われても笑っていた秀麗な美貌と小さな背丈の裏に、成長を押しとどめるほどの苦しみがあったことなど、想像もしなかった。

 ──父以外の誰にも心を見せず、誰も愛さない氷の天使の純潔を散らすのは何処の誰かと賭けまで行われていたが……兄が唯一、身も心も許したのがお前のような──

「おいおいマジかよ、あいつ……」
 自分から誘ってきたくせに、慣れていると言ったくせに、ガタガタ震えていた姿を思い出す。痛くないから止めないでと泣き出されて初めて、ルークがそれまで必死で苦痛に耐えていたのだと気付いた。それほど、アッシュ自身にも経験がなく、彼の真実を何一つ悟ることが出来なかった。
 胸元を握りしめて、わき上がる苦痛をやりすごす。初めてじゃないなんて、慣れているなんて、何故そんな悲しい嘘を付かせたまま逝かせてしまったんだろう……。
「……酷え思いをさせただけじゃなけりゃいいんだが……」

 丁寧に手入れされた体や髪、真っ白でシミ一つない肌、そういうものを守っていける環境で暮らすことこそ、ルークには相応しいと思った。彼を皆が誤解したように、いっそかついでうちに連れていったらと夢想もしたが、これまでに他国からかつがれて嫁いだ女たちとルークとは、もとの身分が違いすぎる。──いつか働きづめの貧しい生活に飽いて、元の生活に戻りたいと言われたら。アッシュを厭うようになったら……。
 今考えると、なんとつまらないことを恐れたのだろう。それでも俺の側にいろと言えるほどのものを、何一つアッシュは持っていない。それでも、俺と一緒になるのが幸せなはずだと言い切れる自信も持っていない。
 ──だが、それでも、アッシュは己の心に従わねばならなかったのだ。絶対に手を離したりしてはいけなかった……!
 己の心を押し殺し、心の求めるままに行動しなかった代償は、これほどに大きい。

 アッシュには、うっかり死ぬことさえ出来ないほど守るものが多い。大切な人も家族だけじゃない。一番辛い時期を身を寄せ合い、支え合って乗り越えてきた村のみんなや、いざとなれば、他国の王にすら剣を向ける覚悟でここまで忍んできてくれた友人たちだって、家族と同じくらい大切だ。だから。きっとこれからも彼らを守るために長く生きる。いつかはルークに対する想いも、新しい恋や、生活に追いやられて風化していくだろう。今は命と同じくらい大切だと思うリングや剣も、そのうち持っていること自体が重荷になっていくのかもしれない。そしていつか金貨に、食べ物や衣服、家畜や飼料、家の修理費、或はいつか妻を得て暮らす新居に、姿を変えていくのかも知れない。

 けれど、あのとき手を離さなければ今頃どうしていただろうと、現実と比べて思いめぐらせることを止められはしないだろう。そして、あの夜のルークの涙、微かに震えていた指先や、汗に濡れた肌の匂い、苦痛を飲み込む吐息や秘めやかな歓喜の声は──生涯忘れることがないだろう。

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