闘犬アッシュ27
進撃の巨人、アニメ1話目観ました! 原作より絵が綺麗でびっくり。ただしその分不気味度は下がってるし、多分原作ほどグロくはしないと思うので、興味はあってもたたら踏んでた人にいいかもです。ジャイアンツの快進撃のアニメだと思って見た人が食欲無くしたとおっしゃってるようですが、そんな……えぐいかな……? 麻痺ってんのかな私……。
立体機動はアニメの方が迫力ありますね! どのように使うものなのか、すごくよくわかりました。えぐいけど、グロいけど! アニメ化向きのマンガなんだろうなあ。ミカサが戦う姿が今から楽しみです。ネタバレになるかも知れませんが、ガチで強い人類ってミカサしかいないんじゃ……? 知らない方へ言うと、主人公のエレンより幼なじみの女の子ミカサの方が強いのです。戦闘の天才です。
今季はヤマトもかなり出来が良くて(私一切先行上映観てないんです)。1話目のEDですでに感極まって涙ぐんじゃった。ヤマト発進時には号泣する自信ある……。一度も観たことない方もこの機会にぜひどうぞ! つじつまのあわないところ(1974年版は打ち切りになったので)や、後日劇場版などで追加された設定を上手に取り込みつつ、そのまんま綺麗に作り直している感じです。揉めてスタッフに入ってないので、松本零士絵ではないんですが、まるで同人のように誰が誰だかきちんとわかる仕様。スタッフはオタクだろうと思うほど何も壊すことないように作り込んであります。ここまで同じならリメイクの必要があるのwという意見もあったくらいなので(元作レイプされてないことを喜びすぎての意見であって、リメイクが無駄だと言っている意見ではありません)旧作の絵の古さに怖じ気づいていた人でも大丈夫。ほんと記憶から抹消したすぺえすばとるしっぷやまととは一体なんだったのか。
ふと思ったけど、日本のアニメは宇宙人を人間型で描きたがるけど、ハリウッドは爬虫類型とか多いですよねえ。その理由とか、ちょっと考えてしまいました。
RDGも始まってるし観るものがいっぱいあって嬉しい ガンダムオリジンもアニメになるというし、マクロス一作目もぜひリメイクお願いします! あのままで!
以下、闘犬。
恐ろしいほど世間知らずと書きながら、それを端的に現すシーンが無いことに気付いてがっくり。い、1年後に……!
「お前、俺と一緒にならねえか?」
「……なんですって?」一瞬何を言われたのかわからず、リグレットは思わず眉を顰めて聞き返した。ほとんど動じることのないリグレットの怪訝な表情がおかしかったのか、ヴァンの瞳に余裕が生じる。
「結婚しねえかと言った」
「……大丈夫?」思い切り薄気味悪そうな目つきでねめつけられ、ヴァンはようやくリラックスした様子で身体を伸ばし、笑った。
「大女優さまにずうずうしいかな」
「私の顔も身体も賛美しない男の妻になれというの? 冗談でしょ」
馬鹿にしたように笑い、手をひらひら降って吐き捨てるリグレットの腕をヴァンが掴む。「わかってねえな。お前の顔も身体も、俺はそれなりに気に入ってはいる。──が、そのブロンドの中身ほど価値があると思ったことがないだけだ」
リグレットはぷっと吹き出し、しばらくうずうずと笑いを堪える表情をしていたものの、とうとう我慢できずに笑い出してしまった。「これまでで一番個性的なプロポーズ。私の頭の中に、男とスイーツ以外のものが詰まっていると勘違いしている人がまだこの世にいたなんて」
「返事は」
「いやよ、暗黒街のボスと一緒になるなんてごめんです。私は銀幕の女王と呼ばれる自分が好きなの。日の当たるところを歩きたいのよ」
笑いながらヴァンを押しのけ、立ち上がろうとする女を引き寄せて、ヴァンはその挑戦的なアーモンド型の目を見つめたままゆっくりとソファに押さえつけた。
「日の射さない場所なんか歩かせねえと約束する」
「あらまあすごい。どうやって?」
「うちのフロント企業を中心にして、少しずつファミリーを解体している。どこにも行き場のないハグレ者を世間に放り出すわけにはいかねえから、本当にゆっくりだが。いずれは「グランツファミリー」ではなく「グランツグループ」と呼ばれるようになる。……かもな」
笑いを納めて、リグレットは自分を覗き込む男の顔をまじまじと見つめた。いつものように唇だけを皮肉そうに歪めた笑み。大洋のように真っ青な瞳は冷たく澄んで、笑みの欠片も含まず、容易に感情を明かそうとしない。
じっと見つめ返すリグレットの瞳の奥で、どこか哀れみに似たものが揺らいだ。
「……マクガヴァン夫人を取り戻すため? それとも、一般人の少年に恋するかわいい弟のためかしら」
「お前のためだ」ヴァンの口元が、更に人を食ったような笑みに歪む。ねっとりとリグレットの唇を食み、『ん?』と視線で返事を促す。
「ああ、そういうこと……。確かに私をダシにすれば、あなたが真っ当になりたい本当の理由は隠せるかもしれないわね。逢うたびに弟の顔も見られるし?」
面白そうにヴァンを見上げるリグレットの目は、世間の人々が思うような美しく、才能に溢れた女王というより、獲物を前に舌なめずりをしている肉食獣じみているとヴァンは思う。こんな女に男の純情を捧げ、ただ一度そのつま先にキスするために大金をつぎ込み、家庭でかわいい奥さんをやってもらいたいと望む大勢の男の存在は、ヴァンの理解の範疇外にあった。
惚れた腫れたの感情で傍に置く女を選ぶ気など、もうない。愛することも、愛されることも望まない。結婚相手に安らぎを求めることも。食うか食われるかの緊張を纏ったまま、互いを骨の髄まで利用しつくす。自分のような男には、そういう女が似合っている。
しなやかな白い腕が首に回された。「今夜私を満足させてくれたら、考えてあげなくもないわ」
「なら決まったな」
自分の手で大きく築き上げたものを、自分の手で、壊す。
ファミリーの崩壊を思い描くと冥い愉悦がわき起こった。ファミリーを解体して資産を洗い、健全な企業に移したあと、誰か適当なものに後事を託して片田舎で一人、静かに暮らす。本物の犬でも飼って……。
喉からくぐもった笑いが漏れる。まったく、どこの誰がヴァン・グランツの夢がこんなささやかなものだと知るだろう。
「ルーク」
改札を抜けると、すぐにアッシュが声をかけてくれた。足をそちらへ向けるまでもなく、ふわりと引き寄せられる。
「おかえり」
「ただいまっ!」
アッシュがルークの手から杖を取り、ルークがアッシュの腕を取る。いつも通りの、慣れて自然なやりとりだった。恋人同士のように腕を組んでも、誰も不審には思わないのだし、朝ぶりに逢えて嬉しいルークが甘えて寄りかかる。
ここ二週間ほど、毎日アッシュが最寄り駅まで送り迎えしてくれているのだ。アパートから帰ろうとしないアッシュはヴァンとなにやら喧嘩でもしたようで、少し塞いでいるように感じることもあったけれど、一緒に住んでいるも同然の状況が功を奏したか、ルークは調子をあげたまま予選を通過し、今は本選へ向けて鋭意頑張っているところだった。
アッシュはルークの練習の邪魔になるのを非常に恐れていて、練習中はリビングの隅で息を潜めているし、せがんでも毎日は抱いてくれない。いくら大丈夫だと言っても、ルークがくしゃみの一つもしようものなら体調が良くないのだと決めつけてしまう。毎日キスをして、一緒に食事を作って食べ、抱きしめられて眠ることが心の安定に繋がっていると、ルークは絶対に言い切れるのに。
「買い物はいいの?」
「昼に行って来た。白身の魚でもいい? ルークは好かないと言ったんだが、ローズがたまには魚を食べさせろと──」
夕食のことを話していたアッシュが突然足を止めた。腕を組んだままのルークを少しばかり後ろに押しやり、身体を斜めにして立ったのに庇われていると気付く。
「……リグレット。どうして」
「学校も名前もわかってるんだから、調べるのは簡単。──乗りなさい。あなたのいい人もね」
「ルークは──」
「アッシュ、あなたは知らないでしょうけど、リグレット・オスローは有名人なの。一応変装はしてるけど、ボディガード付きのリムジンじゃ注目を集めるし、目敏い人には私が誰だかわかってしまうわ。あなたがすぐに見抜いたようにね。──何にもしやしないわよ。ほら、目立ちたいの?」
アッシュは及び腰だったが、リグレットと呼ばれた女にそう言われると慌てたようにルークを横抱きにした。
「アッシュ──?」
「大丈夫。車に乗るだけだ」
そっと降ろされたシートはこれまでに乗ったどんな車より座り心地がいい。探っても、前の座席の背もたれに触れないのに困惑して思わずアッシュにぴったりとすり寄る。行き先も告げずに車は発車したが、アッシュが傍にいるし、あまり怖いと言う感情は起こらなかった。車の中に馥郁としたコーヒーの香りが漂っているのも、リラックス効果があったのかも知れない。
「あなたの言う通り、本当に可愛い子ね」
「あの……。リグレット・オスローって……本物?」
おかしそうな女の笑い声が、正面から聞こえた。「そうよ。驚いた?」
「……少し。でも前にヴァンとどこかでスクープされたことがあったでしょ? だから、もしかしたらって」
「……そう。あなたはアッシュがマフィアのボスの弟だってこと、もう知ってたのね」
「あー、はい、聞いてはいなかったけど……」ルークは何も話さなかったアッシュを責めてはいないというように、アッシュの腕をそっと撫でた。「ヴァン、って名前を知ってたし。人に首枷を付けて、人を傷つけるよう命令するやつって何者だろうって考えたんです。実際に会うまでは、それでもまさかなって思ってたけど……」
「ヴァンに会った? いつ?」アッシュが驚いたように声を上げた。
「二週間くらい前かな……」
「あなたを犬呼ばわりするなと食ってかかったそうよ。それでヴァンはすっかりこの子を気に入ってしまったの。この間ヴァンがあんなことを言い出したのは、それが理由よ。──コーヒーをどうぞ」
車の中に漂うコーヒーの香りがひときわ強くなった。戸惑うルークの手を取って、アッシュがカップを握らせてくれる。「あ、ありがとうございます」
「ヴァンはあなたのところに弟が──ファミリーのものが出入りしているのが他の組織やマスコミにバレて、あなたに迷惑がかかるのを心配しているの。だからアッシュをファミリーから出して、私のところで預かることになったんだけど、アッシュはとても嫌がって。ヴァンにあなたと別れるか、私の所へ来るか選べと言われて、答えを迫られたくないものだから、あなたのところに逃げ込んで帰ろうとしないってわけ」
ルークはゆっくりと首を振った。アッシュの行動はまるで子どもじみていて、理由がこういうことでなければルークだってきっと苦笑してアッシュを叱った。でもルークは何も言えなくて、触れていたアッシュの腕を抱きしめる。
それほど長い時間ではまだないけれど、ここまでアッシュと触れ合ってきて、わかったことがたくさんある。アッシュは恐ろしいほど世間知らずだ。おそらくこの歳になるまでまともに教育もされず、社会から隔絶された世界で育ってきた。自我を首枷で封じられ、人を傷つけながら。ルークに自分の所属するところを話さなかったのは、きっと隠そうとしたからじゃない。アッシュはヴァンがグランコクマ随一の巨大マフィアのボスであるということを、きっと本当の意味ではわかっていないのだ。マフィアというものに対する一般の人間のイメージがどういうものなのかも。自分が、その一員だと見なされるということも。
マフィアのボスの弟であり、一員であるということは、アッシュには息をするより自然なことで、わざわざ話さねばならないほど特別なことではなかった。