闘犬アッシュ16
BLではおなじみのオリーブオイルですが、ジェルが無いときの代わりに使うのは絶対におすすめしません><b 後の始末のめんどくささハンパないです。後悔のあまり死にたくなります。捨てるつもりならいいけど、布類はそのまま洗濯機に入れられないし、手にべったりだから触ったとこ全部が、ああ……! なんかそういったものを使う事態になったら、面倒がらずにジェルとか専門に作られたのを買いにいったほうがいいです。ドラッグストアにふつーに置いてありますから。その方が絶対時間の無駄がないです。
ああ、はい、好奇心です。ほんとに潤滑油として使えるのかっていう
もう思い出すのも嫌な黒歴史の一つですが、作中では結局これしか使えるものが無かった……orz
「ん……っ、ん……っ」
伯父の病状をはじめ、悩み事が多すぎて、ルークはこのところ寝ている間に下着を汚さないようにするための、最低限の自慰しかしていなかった。これまでにセックスの経験があるわけもなく、生まれて初めて他者の口に銜えられた性器はあまりにも快楽に弱く、信じがたいほどあっけなくルークを陥落させた。恥ずかしさのあまり何度も何度も声を噛み殺そうとしたが、それに気付くたび、アッシュはまるで嫌がらせのように舌先を鈴口に突き入れ、裏筋を舐め上げてそれを挫いた。大きく開かされ、抱え込まれた脚を閉じようともがき、なんとか引きはがそうと髪を掴んでさんざん引っ張ったが、子猫を扱うがごとくなんなく押さえ込んだまま、アッシュは舌と唇でゆるゆるとしごきながら容赦なくその先端を吸った。
「ひぁっ……! 放……っ!」
噛み殺し損ねた悲鳴が思わず喉を突いた瞬間、熱くぬめった口内に堪えに堪えたものが勢い良く放たれる。同時に、絡み付くようなアッシュののどの粘膜が、きゅっ、きゅっと先端を締め付けた。
「ルーク、泣いてる……?」ほとんど呆然となって絶頂に身を震わせているルークの頬に、アッシュの気遣うような手が触れた。快楽の涙があふれている目尻に唇が触れ、そっと涙を吸い取る。「気持ちよさそうに見えたけど、嫌だった……?」
「の……飲んだ? おれ、出した、の」ぶるぶると首を振りながら問うと、
「? 飲んだ」
薄々悟っていた答えが返ってきたとたん、どっと涙があふれてきた。「き、汚いのに……っ、」
「え? どうして? 全然汚くなんかない」
「だ、だって、アレだよ? く、口の中だろ……? 汚いし、マズイって……」
心底困惑したようなアッシュに、ルークも混乱しながら懸命に息を整える。
「汚くない。みんな口でしたら、普通に飲んでる。おいしくはなかったけど、ルークのだし、零すのは嫌だ」アッシュはルークがなぜそんなことを気にするのか本当にわからないのか、困ったようにおずおずと言った。「……ルーク、俺はルークが何を気にしているのかわからない。でもわかりたいんだ。だからちゃんと言って。気持ちよくなかった? 本当は……嫌だった?」
ルークは混乱したまま首を振った。「みんな、普通に、飲むって……? ほ……ほんとうに?」
「え……うん。──ルークは、口でしたこともされたこともないのか?」
「あ……あるわけないじゃん……っ!」
ルークの年ならば、すでに初体験を終えているものも多い。なのに自分ときたら見栄を張ることさえ出来ない乏しい知識しかもたないのだ。ルークはそれを酷く恥じながら、小さな声で呟いた。「おれ、ほんとに初めてなんだ、こういうの……」
赤ん坊のころに視覚を失ったのでなければ、あるいはぼんやりとでもものの輪郭が見えていれば別だったのだろうが、ルークの性の知識は同じくらいの年頃の少年に比べて、恐ろしく乏しい。昔から女友達のほうが多く、勇ましい友人から武勇伝を聞かされたりすることも、ほとんどなかった。
一応、伯父は男の子の保護者として何も考えていないわけではなく、点字で書かれた本を何冊かルークに渡してくれた。だがそれは、保護者の目を盗んでベッドの下に隠さなくてはならないような本ではなく、若干色っぽいシーンが多い普通の小説に過ぎなかった。だからルークの知識とは、学校で教わる無味乾燥な性教育で得た知識と、多岐に渡ったジャンルの小説の中で、あれこれぼかして書かれた官能的な部分を、想像で補ったようなものでしかなかったのだ。
「そうか。それなら仕方ない。俺も初めは知らなかった。じゃあ、泣いたのは何故? 嫌だからじゃない?」
アッシュにはルークの性知識のなさなどどうでもいいことのようで、酷い目にあわせてしまったのではとそれだけをしきりに心配した。
あんなふうに達ったのだから、悦くないなんてことがあるわけないのに……。
「い、嫌なんかじゃない。き──気持ち良かった、かも? でもおれ、びっくり、して……」
「そうか……ごめん、びっくりさせたり、怖がらせたりする気はなかったんだ。でも、信じて。俺は変なことはしない。普通のことしかしないから……」
「……わ、わかった……。でもさ、マズイものを無理に飲む必要はない……んじゃないかな、いくら普通でもさ……」
「無理はしてない。マズイ? ……とまでは思わなかった。おいしくはないけど、また飲みたいくらい。ルークが感じてくれた証拠だし……」
アッシュはほっとしたように息を吐き、ルークの頭を優しく撫で、再びキスをする。アッシュの口の中は少し苦みのあるなんともいえない味がして、ほんとうに自分が他人の口の中に吐き出してしまったのだと知らしめた。
まるで全身の骨が溶けたのではと思うほど、ルークはアッシュに力が抜けてぐにゃぐにゃになるまで全身くまなく舐め尽くされ、これまでルークが知りもしなかった官能を掘り起こされた。足の指の間、足の裏、腰のくぼみや背中、これまで気にもしなかった場所すべてが性感帯になる。はじめはくすぐったくて身もだえたはずの乳首も、しつこく吸われ、こね回されている間に固く尖り、快楽を生む源になった。
「……ん、ふうっ……いっ、やぁ────っ……」
ルークは波状に襲いかかる愉悦の前に、完全に無防備だった。両の乳首を捻られ、同時にペニスを強く吸い上げられ、あまりの気持ち良さに泣きじゃくりながら、ルークは二度目の逐情もアッシュの口内で迎えた。
「おかしいな……。ルークを泣かせたくないのに、泣いてる顔がかわいい。こういう顔、もっと見たくなる。……ごめん」泣きじゃくるルークの顔に、心底申し訳なさそうに囁いて、アッシュはキスを山ほど落とした。「……ちょっと待ってて」
アッシュが静かに身体を離し、部屋を出ていく気配がする。扉を閉める音が聞こえると、火照っているはずの身体が急に寒々しく感じた。
イヤ、イヤばかりの自分だから、アッシュは楽しくないかも知れない。つまらないと思われても仕方ないのかもと不安にかられ、ますます涙が止まらなくなる。ふいに絨毯を踏みしめる音が戻ってきて、ドアが開いた。寄り添うように熱を感じ、顔の上に温かいタオルが当てられた。湯を通して固く絞ったタオルが、泣きすぎて重くなった目元を拭っていく。その心地よさに安心して、探るように手を泳がせると、その手をそっとアッシュが握ってくれた。
「……ごめん。アッシュ、まだだよな? おれも手伝うよ」
アッシュのことは好きだけど──こんなとんでもないことに流されてもいいと思うほどには大好きだけれど、自分が同じようにアッシュを口で愛せるかと言われたらまだ少し自信がない。なにせほんの少しまえまで、ルークはそれをとんでもないことのように思っていたのだし……。
「うん。ありがとう、ルーク。ゆっくりやるけど、辛かったら我慢しないで言って」
「えっ?」
文字通り手助けするつもりだったルークの鼻を、良く知った独特の匂いがかすめる。オリーブオイル? と首を傾げたとたん、後孔に温かい、濡れたものが当てられた。問いかけの言葉は、再びキスに飲み込まれる。
「んっ、う……」
反射的に身を強張らせたルークをなだめるようにアッシュはキスを深くして、そこにすこしだけ何かをもぐらせては抜けでる動きを繰り返す。後孔に指でオイルを塗り込めているのだと気付き、ルークは慌ててアッシュの肩に手をつき、突っ張った。
「ちょ、ま、なにやって……」
「ちゃんと馴らさないと、入らない」
「なにが……」
なにが入らないのかと聞いている途中で、気付いた。アッシュは、単に触り合って終わるつもりではなかったのだ。
ルークとて、男同士のカップルがどこで繋がろうとするのかくらいさすがに知っている。気付いたとたん、さっき触れたアッシュの性器を思い出して、反射的に腰を引いた。「無理だって! 入んねえって!!」
「みんなそう言うが、普通に入る」
「それは女の人のことだろ?!」
「男の尻に挿れたことはないが、女も男も同じだろう」
「同じじゃねえって!!」男女の区別が付いていないとしたら大問題だが、今は何の問題も感じていないようなアッシュそのものが大問題だった。「女の人は良くても、男は無理だって!」
「ちゃんと慣らすから、大丈夫。──あとの始末が大変だって言うけど、これが一番良い。身体にも悪くない」
「悪いって! 絶対怪我する! トイレ行けなくなる! やだ! まじでやだ……っ!」
「ルーク……」
「だ、大体っ、なんでおれのほうが突っ込まれんのが、当たりまえみたいになってんだよ!」
駄々っ子を嗜めるような、アッシュの困りきった声が、より一層恐怖を煽った。恐ろしさのあまり、尻で後じさりしながら破れかぶれで叫ぶと、アッシュがはっと驚いたように手を止めた。
「……そういえばそうだ……。ついいつもと同じようにしてしまってたけど、ルークも男なんだものな。ルークは逆のほうが良かったのか。気付かなくてすまない……」
「えっ?」
「ならそうしよう」アッシュはなんの屈託もないようすでルークの背中に手を入れて胸に抱き寄せ、器用に一回転した。
「え、えっ?」
気付くと、ルークはアッシュの腹の上に跨がるように座って、胸に手を突いていた。