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パラレルAL 6話

10日は誕生日でした。
もし時間までに帰れなかったら、ケーキ受け取りに行ってと言われ、自分のバースデーケーキを自分で取りに行くのかよと、もにょっとなりましたが、無事受け取りに行ってもらえて良かったです。

友人たちはこの歳になって、しかも二人暮らしでホールのケーキは有り得ない! っていうんですけど、誕生日とクリスマスはホールのケーキでないとワクワク感が減少すると思いませんか。私は思います。(みんなもうワクワクしないと言うんですが、私はします)絶対ホールでないと! そしてちゃんと「お誕生日おめでとう○○ちゃん」のプレートは付けてもらわないと! ろうそくも立てて、歌を歌ってもらって、ふうってしないと!

ホールで買うくらいなら、違う種類のケーキを何種類か買ってもらう方がいい! と力説されましたが、そんなの普段でもできるじゃないですかー

 

以下、パラレル。

ちょっと流血あります。

 はっと気配に気付いたときには、ルークはすでにアッシュに突き飛ばされるように急な斜面を転がり落ちていた。
 縛られたままの不自由な手で頭を庇っているルークの視界に、同じように滑り落ちながらも途中で体勢を立て直して抜剣し、背後から迫ってきた数本の矢を打ち払うアッシュの姿が映る。
 放った矢を追うように、ダアト軍の軍服を着た三人の男たちが姿を現した。下まで滑り落ちてしまったルークを庇うように立っているアッシュに、一斉に飛びかかる。
 アッシュが言っていた、手柄を横取りしようというやつらなのだろうか。だとしたらずいぶんとセコい真似をする、とルークは顔をしかめた。自分がこうも従順に捕虜になっているのは、正々堂々とした一騎打ちの末に破れたからで、三人掛かりで他人の手柄を横取りしようと企むやつらの手になど諾々と落ちる気はない。
 だがアッシュはこういう事態も想定のうちだったようで、特に慌てた様子もなく余裕を持って相対している。とうとう一人が胸を切り裂かれ、断末魔の悲鳴とともに転がり落ちてきて、ルークの目の前に無惨な屍を晒した。深く裂かれた傷口が溢れ出す鮮血にまみれる直前に、ルークは思いもかけないものを見たような気がして慌てて男の死体ににじり寄り、袖口が染まるのも厭わず傷口を拭った。溢れ出す血にそれは一瞬で掻き消えてしまったが、ルークが確認するのには十分だった。

「アッシュ気をつけろ! こいつら刃先に毒を塗ってる!」
「なに?」
「──ちっ!!」

 正体を悟られたのに気付き、一人が手強いアッシュから標的をルークに変えた。結果としてそれが彼らの敗因になった。一対一での戦いになった途端に、残った一人はそれを悟らされることになった。

 武器もない。手も縛られたままだ。かろうじて足は自由に動くけれども、この状態で彼らから逃げることが出来るはずがないのもわかった。
 静かに目を閉じる。この短い捕虜生活で、ルークはすっかりアッシュが好きになっていた。もっと違う場所で、違う出会い方をしていたならば、良い友達になれたかもしれない。彼の家族のためにも生きてダアトへ行き、高額の恩賞金になってやりたかったけれども、首だけでもかなりの金額を受け取ることができるはずだ──この場でアッシュが生き残ることが出来たなら。
(ま、あの実力なら心配ねーよな! 何と行ってもおれを負かしたんだし……)
 剣が振り上がる風圧を、確かに感じた。

「ぐ……!」

 自分のものではないうめき声に目を開けると、目の前で男の身体がまるで分解されたかのように音素の固まりに変じ、風に煽られて散っていく。それが晴れたとき、アッシュに相対していた男がアッシュの剣を胸に貫通させたまま、ゆっくりと仰向けに倒れていくのが見えた。アッシュがこちらに向けていた手を軽く握ると、まるで発光しているかのように白く輝いていた手から光が消えた。足下に倒れた男の身体に足をかけ、引き抜いた剣を軽く振って血脂を払い、鞘に納める。

「……怪我は」
「……おかげさまで」

 アッシュは男の懐を探り、財布らしきものを引き出すと重さを確かめるように少し手のひらで弾ませて、己の懐にしまい込み、あちこち探って隠された暗器を次々に見つけ出すと、呆れたように鼻を鳴らした。
「なんだ? こいつら……」
「……キムラスカ国王直属の暗殺部隊だよ……」
「なに」
「胸の入れ墨でわかった。ダアト兵なんかじゃない……」
「……狙ったのは、俺じゃなくてお前なのか?」
「そんな……そんなはず、ない。父上が、俺を……なんて、あるはず……」

 これは捕虜で、金づる。

 良い歳なのに嫁にもいかない姉の持参金が作れるし、上手く行けば土地も買えるかも知れない。いずれにせよ、真っ当に働いているだけでは得られない収入源だ。それだけだ。

 だが、泣きたいのに泣けない、信じたいのに信じられない、そんな迷子の子どものような不安げな少年を見て、思わず抱き寄せてしまったのはなぜなんだろう。

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料理、読んだ本、見た映画、日々のあれこれにお礼の言葉。時々パラレルSSを投下したりも。

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