──Asch──

「それは、お前が決めることじゃない!」

 ガイの振り絞るような声と一緒に飛んできた拳は、覚悟していたよりずっと軽かった。かなり腰の乗ったパンチがくるものと思ったんだが、実際は顔をちょっと弾かれて、一歩後退したくらいだ。
 なんだよ、お前になら殴られてやってもいいと思ったのに、この気の抜けるパンチはなんなんだ。

 ぎり、とガイを睨むのと同時に、奴が俺の胸ぐらを掴んで締め上げる。
「お前は間違うなよ、アッシュ。ルークについてお前が考えていることは、本来お前が考えるべきことじゃない。ルークの気持ちは、ルークが決める」
「はあ? お前何言って」
「俺は、馬鹿だった。俺がルークに言うべきは、俺はずっと側にいるからと、誰が反対したって俺だけは応援すると、それだけだったんだ……っ」
「……ガイ」

 レプリカはおろおろと手を伸ばしたり引っ込めたりしているが、俺が怒鳴ったせいか一定の距離から近づけないでいる。だから胸ぐらを掴んだまま、俺の肩で泣いてでもいるかのように突っ伏したガイの声は、あいつには聞こえなかった、と思う。

「……何でわかった」
 あいつのことを心から心配しているガイに、俺の幼なじみでもあるガイに──奴はそうは思ってないだろうが──今更ごまかそうという気は起きなかった。だが、不思議だった。俺は、隠そうと決めたことを悟られたことなど、これまで一度もなかったんだが。
「旦那にすら、そうそう内心を読み取らせないもんな、お前は。だけど、俺にはわかるんだよ、五年お前を、七年ルークを見てきたんだ。お前ら二人は本当に良く似てる。子どものころから、欲しいものを我慢しているときの表情は、お前もルークも変わらない。それ、『あれ以来』、ルークが結構よく見せる表情なんだ」
「……」
 思わず、くすりと笑いが出た。
「……なんで笑うんだ」
 ガイがムッと眉を寄せる。ああ、レプリカのその表情なら、何度も夢で見た。あの情けない面と似ている、なんて言われりゃ笑いもするだろうよ。

 ……そうか。夢の中のレプリカと、俺は同じ顔をしてるのか。








 ヴァンは俺のレプリカのことを『どうしようもなく甘ったれで愚かな人間』だと称したが、直接自分で見ても、またチャネリングを通して覗き見ても、その評価が決して誇張ではないことが知れ、俺は酷く失望もしたが、心のどこかで満足もしていた。
 レプリカはあくまで俺の代替え品にすぎず、ヴァンが日頃から言って聞かせる「真に必要なのはお前」という台詞が真実であることに安心もしたし、自尊心をくすぐられもしたからだ。

 だがヴァンの動向に不審を覚え、計画の全貌を俺に明かしてはいないことを探り当てたとき、そして真の目的を探るため信頼出来る手のものが欲しいと思ったとき。俺の脳裏に浮かんだのは、不思議なことにあのレプリカだった。
 そのレプリカは、結局うかうかとヴァンの甘言に乗ってアクゼリュスを崩落させたし、十を聞いても半分も理解出来ないような頭の巡りの悪いやつだった──いや、今は混乱ゆえのことだったとちゃんとわかっている──ヴァンから話を聞いて、想像していたのより遥かに悪かったと言っていい。そこで俺は最初の二律背反と向き合うことになった。

 レプリカは、被験者である俺の存在と能力を引き立てるためにも、愚かでなければならなかった。
 同時に、俺と同じ思考をし、目的を共にする同士足り得る存在でなければならなかった。

 それが両立しないことは至極当然のはずだったが、俺は、俺の反吐が出るような愚かさには蓋をして……その二つを両立させられないレプリカのみを責めることで崩れそうな自分の足場を確保したんだ。ユリアシティであいつに自分の立場というものを思い知らせてやったのは、俺のこれまで舐めてきた辛酸を、自分が死すべきときを間違えた生贄であることを、せめて殺す前に教えてやろうという残酷な温情にすぎない。俺が止めを刺す前にあいつが気絶などしなければ、本当にそうなっていただろう。だが、俺は、時に『敵』とは呼べない無力なものや、一度敵対したものは、白旗を掲げられても止めを刺せという、ヴァンの方針を嫌悪していた。

 ──身も心も疲労の限界を超えたあいつが、俺が止めを刺すまえに倒れてしまうほど消耗していたことを、今は深く感謝する。

 あのとき、あいつの精神を内に取り込んだことに、さしたる意味はない。強いてあげれば……そうだな。誰からも顧みられない存在であることを自覚させ、絶望させ。命を断ち切ることが出来なかった代わりに別の意味で止めを刺しておこうとか、そんなことをぼんやり考えたかも知れないな。




 夢を見た。

 レプリカ情報を抜かれたあとの後遺症もまだ癒えきっていないうえ、意識を朦朧とさせる甘い水──あのころはわからなかったが、麻薬の一種だったんだろう──のせいでほとんど前後不覚の状態で、俺は逃げ出した。逃げよと言わんばかりに牢の鍵は開いていて、剣まで立てかけられていたことに、あのときは気付かなかった。

 ちっぽけで弱い俺は、益体もない魔物たちの格好の獲物だった。次々に襲ってくる奴らを死に物狂いで倒し、負った傷を焼いて血止めをし、高熱を発したまま普通なら臭くてとても食えない魔物の肉を食った。靴擦れを起こし、肉刺の潰れた血まみれの足を引きずって歩き続け、辿り着いた港町では物乞いの子らに交じって食べ物屋の裏手のゴミを漁り、棒持て追われながら船に密航した。
 それがどのくらいの期間の旅だったのか、今でも俺は正確に思い出すことが出来ない。発熱していたせいもあるだろうが、うちに帰る、ただその一心、いや。本能だけで動いていたせいでもあるんだろう。

 ようやく辿り着いたバチカル。血泥でどろどろになり、あちこちが破れた汚いマントの子どもを眉を顰めて見やる人々の間を抜け、抜け道を辿って中庭を覗き見た。

 俺にとっては、そこで見た、楽園のような光景こそが、真の悪夢と言えた。

 ──ああ、確かに俺こそが本物のルーク・フォン・ファブレだと名乗り出ることは簡単だったろう。俺には記憶がある。名乗り出ることさえ出来れば、信じてもらうのはきっと簡単なことだった。

 だが、そこに至るまでの酷い道筋が……ぼろぼろの衣服や、貧相に痩せさらばえ、あちこちに潰瘍のできた垢だらけの身体や、油や埃でごわごわにもつれて固まり、虱のたかる頭髪が、そのときの俺の現実であり。明るく清潔で、おそらく良い香りもしているのだろう母上やナタリア、レプリカは……ひどく現実味がなかった。夢の中で俺はここにいる、俺が本物だ、そこは俺の居場所だと血反吐を吐くような思いで叫び続けたが、その叫びは現実には一音も喉から漏れてはこなかった。──俺はそのとき、惨めなナリで彼らの前に出ることが出来なかった。居場所を取り戻す最後の機会を、馬鹿な見栄で帳消しにしたんだ。ああ、ヴァンにはもちろんわかっていただろう、俺が自意識ばかり高い馬鹿な貴族の坊ちゃん、ってことがな。

 汗みずくで飛び起きて、涙の滲む目元を乱暴に拭っているとき、意識の隅に蹲った俺のものではない驚愕と、深い悔恨と悲しみの気配を感じて舌打ちした。どうやら、俺の見た夢をあいつも見てしまったものらしい。レプリカごときに同情されたということに激しい怒りを感じたものの、意外に思ったことも憶えている。他人の痛みや苦しみを、我がことのように感じることが出来る奴だとは、全く思っていなかったからだ。

 そんなことがあってから、俺は常にあいつに隙を見せないように意識をシャットアウトしたが、完全ではないらしく、互いに知られたくなかったことがじりじりと互いに漏れだしているのを嫌でも悟らざるを得なかった。あいつが俺の『悪夢』を知ってしまったように、俺もあいつの苦しみを知ることになったんだ。

 聞こえよがしの陰口に、急に味を無くす食べ物。俺には一度も振るわれなかった子ども用の鞭。複数の教師たちが上から上から振るうため、手の甲は腫れ上がり痛みで眠れない夜が続く。すぐに冷やせと叫んでも、届かない。
 俺は少しずつ少しずつ、何をやっても駄目ならば、もう何もやるまいと……どれほど努力をしても『前』ほどではないと断じられるならば、努力をするのも馬鹿らしいことだと、あいつが諦めていくのを見ていた。心の軋む音を聞いていた。比較され続け、貶められ続け、何をやっても『前のルーク』に追いつけない自分に、次第に強い劣等感を抱き、そんな自分を隠そうと本来の気質以上に傲慢に振る舞う。

 哀れな、レプリカ。
 傲慢な殻の中の、傷つきやすいむき出しの心に、気付くものは終ぞなく──。

 堪え難い臭気を発する汚泥に、無抵抗に引きずり込まれるあいつに、振り払って岸へ戻れと怒鳴りたくても、引っぱり上げたいと願っても、俺には動かせる手も口もない。無数の手に、上から押さえつけられるように、絶望に染まった朱の頭が見えなくなる。一体、何の罰だっていうんだ。俺は毎夜、無力感と喪失の痛みに責め苛まれる。

(愚かなレプリカ・ルーク)

 ヴァンの声だけが、無音の世界で繰り返し繰り返し、こだまする。

 些細な思いつきで意識を共有したことが、これほど心の親和を招くとは想定外だった。俺は、俺の意識は遮断しながら、頻繁にあいつの意識に、意識を添わせるようになっていた。
 毎晩、あいつは哀れになるほど苦しんでいた。夢は俺でさえ正視するのが苦痛なほど酷いものだったが、しかもそれは日に日により陰惨になっていった。あいつが戦い続ける限り、『罪』は増えていくばかりだからだろう。この調子ではほとんどまともに眠れてはいまい。だが、あいつは戦うのを決して止めない。
 ──強い。
 その強さを受け継いでいてくれたことは、嬉しく思う。同時に、度し難い馬鹿だとも思う。
 もう少し利口で、したたかであれば、罪の半分はヴァンに押し付けて心を軽くすることも出来たろうに。不器用な奴……。

 ──だが、仕方ない。
 レプリカだからな。

 俺の、レプリカだからな──




 野暮用をすませるために法衣を着たものの、今の俺は神託の盾を逐電している状態で本当はこれを着られる身の上でないこと、それになにより目立つので、さっさと着替えようと宿に戻っているとき、左手に大きく広がる噴水広場に、レプリカの姿を見つけた。

 自分が恐ろしく人目を惹く人間であることに気付いていないのか、良い年の男が嬉しそうにアイスクリームを舐めている姿を見て、そこここに固まった女たちがちらちらと意識した視線を向けているのが俺からもわかるが、呑気なレプリカはまったく気付いてはいないようだった。
 ちりちりと胸のどこかが焦げるような苛立ちを感じたが、俺はそれをレプリカから目を離すことで押さえ込んだ。
 遅まきながらあいつが俺に気付いたらしく、強い視線が向けられたのがわかった。
 ちらと視線を向けると、案の定表情がわかりやすくぱっと輝く。あいつを窺っていた女たちの険を含んだ視線が、一斉にこちらを向く。おお、怖え怖え。その前に俺は素早く視線を前に戻した。しばらく複数の視線が値踏みするように絡まってきたが、この距離ではどうせ顔も見えまい。ローレライ教団の詠師とだけ確認すると、すぐに興味を失ったように離れたが、あいつの視線だけは外れなかった。

 面映さがじんわりと胸を暖めた直後、前方でざわめく気配を感じた。次いで複数の悲鳴があがると同時に、俺は走り出した。視界の一番隅に、ひときわ鮮やかな朱が映る。
 さほど走らず目抜き通りに到着すると、暴れる荷馬車が目に入った。荷物が山と積まれた荷台は、馬が身体を振るたびに左右に振られ、周囲のものをなぎ倒している。まずは荷台を切り離さねばと足を踏み出した瞬間、後ろ足で棹だった馬の腹の下に、子どもの姿が見えた。
「……っ!」
 しまったと思った瞬間、レプリカがそこに滑り込んだ。馬と荷台を繋ぐ馬具を、一閃で切り離す。ドォンと地響きを立てて、馬の前脚が振り下ろされる。レプリカと子どもが踏みつけられたように見え、周囲から悲鳴が上がった。心臓が大きく跳ね、全身から嫌な汗が噴き出した。
 周囲の被害を考える前に、俺はアイシクルレインを暴れる馬に放ち、昏倒した馬が横倒しになるのを飛び越えてレプリカを探した。レプリカは運河ぎりぎりのところで子どもを抱え込み、呆然と座り込んでいる。

 無事か──……。
 ぎゅっと目を閉じ、大きく息を吐いた。

 泣きながら礼を言う親子にへらへらした顔を向けているレプリカを見て、俺は猛烈な怒りと、安堵を感じる。レプリカが俺に気付いて見上げ、バツが悪そうな顔をした。
 なんだその顔は。お前、下手打てば死ぬところだったとわかっているのか。

「……良くやった」
 のど元までこみ上げた罵声を堪え、余計なことを言わないよう一言だけ告げると、レプリカはふにゃっと泣き笑いのような笑みを浮かべ、立ち上がった。
 ──立ち上がろうとした。
 どうやら腰が砕けて座り込んでいたものらしく、足が震えている。無理をするな、と声をかけようとした直後、大きくバランスを崩した。
 反射的に抱きとめると、一泊空けて腕の中でレプリカの身体が硬直した。なに、と思う間もなく思い切り突き飛ばされる。反動で運河に転げ落ちそうになるレプリカの腕を慌てて掴み、引き寄せると、レプリカはそんな危うい場所で、思い切り暴れだした。
 何を考えてやがる、落ちるだろうがと、とにかく運河から離れさせようと抱き込むと、レプリカの喉から悲痛なうめきが漏れた。何事とみやると、熟れたトマトのように真っ赤なレプリカの顔が目に入った。目が合った途端、泣き出すのを堪えるように唇を噛んで目を閉じる。

 ──ああ。
 そういうこと……か。
 お前、俺に気付かれてないと思ってたのか。

 レプリカはなかば逆切れのように俺のことが好きだと吐き捨てたあと、返事が欲しいとは思っていないと自分勝手に切り上げて走り去ってしまった。

 ──正直、ほっとした。
 俺が、あいつのことをただのレプリカだと思っていられれば良かったのにな。
 命の期限が切られた俺が、あいつの気持ちに応えるわけにはいかなかった。だが、完全に断ち切る決意もできないんだ。
 今、俺が欲しいと思っているもの。それは応、と答えるだけで自分のものになるとわかっている。だが俺は、それに応と答えることも、否と答えることも、出来ない。

 俺はだんだんあいつと接触を断つようになった。遠目に見るあいつは、少なくとも表面上はこれまでと何も変わらないように能天気に見えた。

 毎夜、あいつに気付かれないよう、あいつのフォンスロットにただ、添った。いつものようにこじ開ければ、頭痛でバレてしまうからな。

 相変わらず酷い夢を見ている。あれからだいぶ経っているのに、褪せないどころか凄惨さは増していた。
 時折、俺の夢も見ている。これは誰だと思うほどにやけた面でレプリカに相対していたが(こういう俺があいつの願望だというのか)、レプリカは魔界の泥に沈んでいく夢より苦悶の色をやどした顔をしている。夢の中での俺が本物ではないと気付いているような顔色だった。
 可哀想で、哀れで……それでも一心に俺を慕うお前が愛おしくてならない。




 セントビナーの町外れで、急に空模様がおかしくなった。
 まるで真夏のような積乱雲に、驟雨の予感を感じ、近くのソイルの木の下に駆け込んだ。途端に全身から力が抜け、酷い頭痛が襲ってくる。強く気を保たなければ意識すら持って行かれそうになる。ヴァンに切り裂かれ、いつまでも治らない胸の傷がこじ開けられるように痛む。
 タイミング良く宿でこの発作が起こるときは、苦しみのままにのたうち回ることでいくらか気が殺がれるのか、収まるのも早いんだが、一歩外で起こると周囲の警戒もしなければならないと焦りがあるからか、返って長く苦しむことになる。
 そう考えれば、今回は安全な町中にいるぶん、いくらかマシなんだろう。田舎町で住民が早く家に引きこもるため、人気がないのも幸いだった……。

「……アッシュ?!」
 ふいに頭上から憶えのある声が降ってきた。
「────お前か」
「一体どうしたんだよ?! どっか、怪我を」
 うろたえたようにレプリカが降りてくる。
 瞬間、ぞわっと鳥肌が立つほど急速に、大量の音素がレプリカに吸い寄せられるのがわかった。

「……っく、寄るな!」

 苦痛のあまりに、思いのほか語気が強くなった。レプリカが出しかけた手を宙に泳がせたまま、戸惑うように動きを止める。

 ああ、わかっている。
 命の最後のひとかけらまで、お前が持って行くがいい。
 だが、もう少し。
 もう少しだけ──俺の背中を追ってくるお前の視線を感じていたいんだ。

 レプリカがこれほど近くにいなければ、少しはましだったんだろうが、これまでにない痛みに、とうとう俺の矜持と膝が崩れ落ちた。
「──アッシュ?!」
「触るな! 俺の側に寄るんじゃねえ……!」

 せめて収まったところで出くわせば良かったものを。これ以上側に来られると、俺の音素がお前に流れてるってこと、気付かれてしまう。

「アッシュ、でも……」
「──っ、構うな」

 お前に、俺の音素乖離のこと、大爆発のこと、気付かれるわけにはいかねえんだ。
「じゃ、じゃあ、せめてグミを」

 それを知ったら、また一つ、お前の自虐ネタを増やしちまうだろうが。

「うぜえな! 俺に構うなって言ってんのがわからねえのか劣化野郎!」
 何もかもが終わった後で、「アッシュ、最近見ないな」とか……そんな風にお前の人生から退場したいんだよ、俺は!

「……お前がここにいると知っていたら、」
 ──ここへは来なかった。欲しいと言って腕を伸ばせば中に納まってくれるだろうお前に、触れないでいるのは……正直しんどいんだ。

「──ガイっ?!」
 レプリカの驚愕の声に目を向けると、憤激した顔で俺に殴り掛かってくるガイの姿が目に入った。
 そう……だな。
 あいつを大切にしているお前だ。あいつを傷つけることしか出来ない俺に、お前が怒るのは当然だ。いいぜ、殴られてやるよ──








「……俺と一緒にいると、あいつはいずれ酷く辛い思いをすることになるんだが」
「意味がわからないが、それは先回って俺たちが考えることじゃない」
「構わないと?」
「──立ち直るまで、俺が側にいる。ずっといる。爵位なんてくそっくらえ!」
 ガイは俺を突き飛ばすように解放し、苛烈な瞳で見据えた。
「まだわからない。なんでルークはお前なんかを好きになっちまったんだ」
「俺が知るもんか」
「意味は違うかも知れんが、最初がヴァンデスデルカ、次がお前。趣味が悪すぎだ!」
 ああ。それには大いに同意する。

「しかも、劣化していっている。……もしかしたら、俺の次はもっと酷いのがくるのか……?」
 疲れてため息しか出ない俺をきつく睨み据えたまま、ガイは後方に軽く顎をしゃくった。

(わかったのなら、持って行け)

 ──ちっ。
 俺があいつに食われたあとのフォローは間違いないなく全力でやれよ。あいつが泣いたら、化けて出てやるからな!

 俺はガイの肩に身体をぶつけるように横を通り抜け、おろおろと立ちすくんでいるレプリカに向かって足を踏み出した。






 私の中では、ルークの一番の理解者足り得るのはアッシュであるため、そのアッシュにガイが本気で怒る、というシチュエーションが浮かばず、結局こんな感じになりました>< 我ながら分かりにくく、且つ淡々とした話ですみません。実は、三者は互いに、少しずつ誤解したり、見誤ったりしたまま互いのことを語っています。あえて語らないので、お暇のあるときにぼんやり想像してみてやって下さい。
 よろしければ、しま猫様のみ、お持ち帰りをどうぞ! (2011.09.12)